以下は、私の11月7日のFacebook投稿です。全文表示の状態でのスクリーンショット画像が撮れないので、以下にテキストと画像を貼り付けます。
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先日来、Twitter上に寄せられた、「公開討論の音声データアップ」に関する意見の一部をご紹介していますが、加納土監督からもコメントを頂きましたので、こちらにご紹介させていただきます。(掲載するコメントは、全てTwitter上の公開リプライで行われたものです)
今回のしんゆり映画祭に、加納さんが監督された映画『沈没家族 劇場版』が上映され、先日のオープンマイク・イベントにも参加されていました。(纐纈さんのような登壇者ではなく、参加者の一人として途中で発言されました)。
加納さんは、イベントの音声がYouTubeにアップされているのを偶然知り、その後の一連のやり取りをご覧になり、私にリプライで質問・意見を寄せてくださいました。
加納さんとのTwitter上のやり取り:
加納さんとのやり取りは以上ですが、それとは別に、『沈没家族』をめぐる、オープンマイク・イベントでのスタッフの発言が、私はとても印象に残っていました。良い機会なので、そのことを以下に書きます。
当日配布された資料(スキャン画像添付)によれば、加納さんは、映画『主戦場』の上映中止を受け、様々な協議をした結果、苦渋の決断として『沈没家族』の上映をする(=ボイコットをしない)と決めた、と書かれてありました。
その大きな理由の一つに、しんゆり映画祭スタッフの方々の尽力(2回だけの上映のために、対談ゲストとの交渉やオリジナルの掲示物の作成等をされた)も挙げていました。
映画祭が決めた『主戦場』の上映中止には断固反対するが、市民映画祭としてこれまで積み重ねてきた努力を無駄にはしたくない、ということだろうと思います。(これは、私の勝手な解釈ですが、私は若松プロのボイコットだけでなく、この決断にも共感を覚えます)。
…しかし、オープンマイク・イベントの最終盤に、『沈没家族』の上映担当スタッフが前に出て発言したとき、私はその発言に心底がっかりしてしまいました。
そのスタッフは、『沈没家族』を保育付き上映という形で見せることを、とても楽しみにしていました。でも、今回の『主戦場』をめぐる件で、(安全面は大丈夫か)と心配になりました。保育は、まさにこのオープンマイク・イベントの会場で行われる予定になっていましたが、そこは、自由に往来ができる場所。『主戦場』の上映に反対する人たちが会場に押し掛けてきたときに、保育の安全を守れるかというと、それは心もとない状況である、と。
…と、ここまでは、懸念としてまだ理解ができるのですが、問題は以下…
『沈没家族』と『主戦場』、どちらが良いかと言ったら、私は『沈没家族』を保育付きで市民の方々に見せたいんです。
…と!!
それは率直な思いだったのかもしれませんが、私は、そもそも今回問題になっている「表現の自由とは何か」について、このタイミングと状況でもなお、そのスタッフの方自身に(全員とは言いません)、どういう問題なのかが、分かっていないのだなぁ…と思ってしまいました。
『主戦場』が上映できる「表現の自由」がなければ、『沈没家族』が上映できる表現の自由だって、いずれ奪われていきますよね??? 保育付き上映ができるのも、『主戦場』が上映できる「表現の自由」が保証されているからですよね??
この発言には、「映画祭スタッフの尽力を無駄にしたくない」と上映を決断された加納監督が、ガッカリして泣くよ…と思ってしまいました。
このようなやり取りからも、『主戦場』は上映されても、問題はまだ根深いまま残っているなぁ…と思っている次第です。
ところで、以下は独り言ですが、今回、私が公開討論を無断録音した(=「ルール」を破った)という件で、思いがけず、纐纈あや監督や加納土監督より、「ルールを守れ」という批判を頂いています。お二人とも、私と同時代にドキュメンタリーを製作されている、私よりもよく知られた方々です。
開き直っているわけではありませんが、今回の件を経験し、「ドキュメンタリー監督って、こんなにルールを重んじる人たちなんだ?!」と、驚いた次第です(馬鹿にしているわけではありません)。
私はこれから、「自称」に加えて、「不良」「ゴロツキ」ドキュメンタリストと名乗った方が良いのかもしれません。
以上です。
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私の上記Facebook投稿に対して、映画監督の今泉浩一さんより以下のコメントを頂きました。ぜひご紹介させていただきたいと思います!(今泉さんは、その後さらに補足としてコメントを寄せてくださいました。こちらよりご覧ください)。
また、同投稿に独り言として追加で投稿した、私のコメントも掲載します。
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これはどなたに宛てた返信でもないですが…
私自身も、「録画や録音をネットに公開しないでください」とお願いすることはあります。例えば、私の上映後トーク、講演、ワークショップについてです。
そのように私がお願いする理由は、「表現の自由」や「知る権利」という観点からではなく、ぶっちゃけ(言い方は悪いですが)「メシのタネ」だからです。
講演は、初めて招かれる会場の場合は、半分ぐらいが毎回同じ内容です(自己紹介的なもの)。残りの半分は、その時に上映する映画にまつわる話や、講演先の客層(学生か社会人か、特定分野の市民活動家向けか等)などの要素により、若干構成を変えてお話しています。
毎回、そこまで大きく変わらない話をするわけですから、その記録がすべてネットで観れてしまう…となると、わざわざお金を払って会場まで話を聞きに来てくれる人が少なくなってしまうし、来場者も(その話はもう知っている)とつまらなくなってしまうと考えるからです(まぁ、私にもっと引き出しがあればよいのですがね!)
要は、映画本編をネットに載せない(=お金を払って観に来てください)というのと似ています。
ただし、私も、作品・テーマによっては、緊急的にネットで誰でも見られるように公開するときもあります。
『木田さんと原発、そして日本』という映画は、国政選挙前にぜひ原発の問題を考え、争点にして欲しいと思い、YouTubeで投票日当日まで公開しました。(現在はネット上では見られず、上映とDVD販売のみ)
また、何かしらのテーマで記者会見を開いたら(まだ私にはその経験がありませんが)、それはもちろん一部始終をどなたでも取材・公開OKとするでしょう。その内容を広く、多くの人に知らせてほしいからこそ、記者会見を開くのですから。
私自身はそのように考えます。
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11月9日現在、これまでの主な流れは以上です。映画『主戦場』上映中止をめぐる騒動と同様、この「場外乱闘」にも「表現の自由」をめぐる議論・課題が含まれていると思います。興味を持ってくだされば幸いです。
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前の記事を読む:
▶ 場外乱闘#7:Twitterに寄せられた、様々なコメントの紹介・第二弾!(⇒こちら)
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