今月、世田谷区のPCR検査を受けました。なぜ受けることになったのか、検査はどのように行われたのか、私の個人的な体験を書きたいと思います。
現在も感染者が増え続け、収束の見通しが立っていないにもかかわらず、PCR検査に関しては、そもそも電話が全くつながらなかったり、症状がかなり重い人でも検査を受けられない…などの問題が指摘されています。また、「検査の結果、陰性だった場合は数万円もの検査費を請求される」などの悪質なデマも、SNS上にいまだ掲載されています。
私の個人的な体験が、参考のひとつとなればと思います。
私の家(夫と二人暮らし)は職業柄、かなり早い段階から、コロナウィルスがもたらす経済的な打撃を受けていました。私は、普段は自主映画の制作と週1回のアルバイト程度の仕事しかしていませんでしたが、家計を支えるため、3月初めから施設警備員のアルバイトを始めました。警備員の仕事を選んだ理由は、密集を避けることができるので、感染のリスクがなるべく少ないのでは?と考えたからです。
しかし、実際に警備員として働いてみると、確かに警備中は人との接近はあまりありませんが、休憩や待機の時間は、窓のない8畳ほどの控室で6~8人で過ごさなければならず、いわゆる「三密」のリスクがあるのです(制服のまま控室以外で過ごすことは認められていませんでした)。
現在、さかんに「Stay home」と呼びかけられていますが、警備員を始め、コンビニ、スーパーなどの仕事は、生活インフラを支える仕事として、Stay homeができません。
休憩中にお話を聞くと、警備員の仕事をされている人たちは、もともと生活に余裕がないという人がとても多いです。ダブルワークで週に1度も休みがない…は当たり前、70歳を過ぎても生活のために夜勤をする人も珍しくありませんでした。コロナの感染はもちろん怖くても、働かざるを得ない…そういう人たちばかりでした。
「三密」のリスクを避けつつ稼ぐために始めた警備員のアルバイトでしたが、実際には感染リスクはとても高いのかもしれない…。私自身、そんな不安を抱えながら仕事を続けていました。
やっと仕事に慣れ始めたある日、のどに痛みを感じました。普段だったら気にならない程度の痛みかもしれませんが、心配になり仕事を休みました。(以降出勤はせず、その後は退職)。
自宅でしばらくの間、以前病院で処方された風邪薬、市販の風邪薬、漢方などを服用しましたが、のどの痛みは治る気配がなく、体のだるさも現れ始めました。体温は平熱より少し高い程度でしたが、(もしかしたら…)という不安はぬぐえませんでした。
ほぼ同時期に、今度は夫が「味覚を感じない」と言い始め、不安はますます強くなりました。夫にも仕事を休んでもらい、買い物以外ほとんど出かけることなく、自宅で様子を見ました。
それでもなお、二人とも症状が改善しなかったので、厚生労働省のホームページでPCR検査受診の手順を調べ、まずはかかりつけ医(近所の耳鼻咽喉科)に電話で症状を話しました。コロナ感染の疑いがある場合は、来院せず電話をすることと書いてあったためです。
かかりつけ医より、世田谷区保健所の「帰国者・接触者相談センター」に電話をして、検査を受けてくださいと言われ、電話番号を教えてもらいました。
教えてもらった番号に電話をかけて見ると…
…テレビや新聞などでもさんざん報道されている通り、ず~~~~~~~っと話し中です。(受話器を上げたままなのでは?!)と疑ってしまうほど。
かけてもかけてもつながりませんでした。
というか、このまま掛け続けて、つながるとも思えませんでした。
どうしてこんなにハードルが高いんだろう? もしコロナだったらどうするんだろう??
「自主隔離」と言ったところで、買い物には出かけるでしょう。レジかごを持つ、商品を手に取る、支払いをする…。外部のものにまったく触れることなく買い物を貫徹するのは、実際には不可能に近いです。
検査を受けられないことで、自分が感染を広げてしまったら…?
私の症状は、いわゆる「重症者」とは程遠いかもしれません。ですが、普段とは異なる症状があり、陽性でも無症状で感染力を持つ人もいるという報告もあるぐらいですから、自分が感染していてもまったく不思議ではないと思えました。
私は、世田谷区保健所への電話をあきらめ、世田谷区役所に電話をしました。自分と夫の症状を話し、保健所に電話を掛け続けているがまったくつながらない、せめて、いち市民の声として、こういう実態があると上に報告してくださいとお願いしました。
そんなことをしてもムダだと思われるかもしれませんが、言わなければ、声としてすらカウントされないのだから…と思い、電話に出たかたに伝えました。
「しばらくお待ちください」と言われ、保健所に電話を繋いでくれました。ビックリしましたが、かかりつけ医に話した症状とその後の経緯を伝えました。
「検査が必要かどうか、のちほど担当者から電話をします」と言われ、私の氏名、住所、電話番号を聞かれました。
翌朝、保健所の担当者のかたより電話がきました。前日同様の話をすると、「来週まで自宅で様子を見ていただいて、それでも変わらないようならば検査をしましょう」と言われました。
来週にまた電話をくれるもの…と思っていたら、次の日の午前中に保健所から電話があり、「来週様子を見て検査をすると言いましたが、今日これから検査を受けることができますが、どうしますか?」とのことでした。
その日は午後、知り合いから連絡が来る予定があったので、「明日に受けられますか?」と質問したところ、「土日は検査をしていない」と言われました。
それならば今日受けるべきだと考え、自分の予定を変更し、夫と二人で検査を受けに行くことにしました。
電話で、「PCR検査の会場は、保健所ではなく、インターネットの検索にも出てきませんのでご注意ください」と言われました。
??? どういうこと???
「三軒茶屋にある世田谷区立保健センターで、1階の入り口は閉鎖していて、電気も消えているので、外からは開いているように見えません。地下駐車場からお入りください。警備員に検査で来たと言って、階段を上がってください」と説明を受けました。
世田谷区立保健センターの外観(外観写真は後日に撮影)
写真を撮りに行ったのは平日の昼間でしたが、私が検査を受けた日同様、1階正面入り口は閉鎖していました(地下駐車場には入っていく人たちが見えました)。
地下駐車場付近
以下は、検査当日に撮った写真です。「公共交通機関を使わず、自家用車などで来てください」と言われていたので(言われなくてもですが)、バイクで行きました。
駐車場にバイクを停め、警備員さんに検査で来た旨を伝えました。
地下駐車場より、建物内部へ。私が見た範囲では、「PCR」「コロナ」という文字はなく、単に「検査会場」「1階までお進みください」といった案内板のみでした。
階段を上ります。
「世田谷保健所 検査会場」
会場に到着すると、名前を聞かれ、しばらく待ちました。(当日、身分証明書や健康保険証の提示は求められず、検温もありませんでした。もちろん費用も掛かりませんでした)。
検査をする部屋はA、Bの2部屋のみ。
私たちが到着した時、ちょうど前の人の検査が終わったところでした。
検査に要する時間(テレビでよく見るような、長い綿棒を鼻に入れる検査)自体は、うまくいけば(スムーズに入っていけば)2分半から3分ぐらいです。感覚としては、「鼻」ではなく「目の下」のあたりにまで綿棒が差し込まれるような深さで、かなりの違和感を我慢しなければなりませんでした。検査がスムーズにいくかどうかは、検査を行う人の技量にも左右される部分があるかもしれないと感じました。
私の場合は、待ち時間3分ほど、検査2分半ほど、その後の問診3分ほど、今後の流れについての説明と注意事項が1分ほど…で、一人にかかる時間は10~15分ぐらい取ってあるのだろうと思いました。
駐車場に入ってから、検査を終えて駐車場を出るまでの約15分の間、私たちの前に1人、私たちのあとに2人(説明を二人一緒に受けていたので、家族か同居人だろうと思います)を見かけました。
検査室前の様子
…ということは、30分間隔で3組(3人~6人)ぐらいというペースでしょうか? そして土日はお休み…。
陽性が疑われる可能性が高い、検査会場こそ「密」を避ける必要があります。とはいえ、世田谷区は人口92万人、東京で感染者数が最も多いとされている地域です。このように限られた検査体制では、果たして正確な感染の実態を把握できるのかどうか、不安にも感じてしまいました。
以下は、夫が検査を受けている時の写真です。夫の方は、味覚障害を訴えていたので、鼻に綿棒のほか、口の検査をされました。アイスの棒のような平べったい、長さ10センチ程度の木の棒を、のどの奥深くまで突っ込まれ、本人はあまりの異物感と痛さに飛び上がったそうです。
受付や問診をする係の方々の、防護の服装は様々でした(役割によって違うのかもしれませんが、わかりません)。防護服のような衣服とフェイスガードを身に着けている人もいれば、ビニールのエプロン姿にマスクの方もいました。
検査に従事する方々の安全こそ、もっと守られるべきだと思います。
二人の検査・問診が終わった後、今後についての説明を受けました。ウィルスの量によって、検査結果が出るまでの時間に差があるそうです。ウィルスの量が多ければ、早く検査結果が出ますが、少ない場合はその分時間がかかる、と。通常は3~5日で検査結果が分かり、保健所から本人に電話で検査結果が告げられるそうです。
「検査結果が出るまでは外出を控え、自宅で過ごす」、「家庭内でも、部屋を分けて過ごす」、「毎日健康状態を確認する・体温を測る」などの注意事項を受け、「もし陽性だった場合は、入院または自宅待機となる。その場合は、保健所の指示に従ってください」とも言われました。
私たちの場合は、3日後に保健所から電話を頂き、結果「陰性」でした。心配した症状は、検査結果が出るころにはすっかり解消していました。
もちろん結果を聞いてほっとしましたが、一方で、こんなに検査のハードルが高いこと、保健所では土日は検査をしていないということなど、このままで良いのか?と、心配にも思いました。
正直、「自分たちは検査をしてもらえたからラッキー」と喜ぶような心境には、まったくなりませんでした(今後も感染するリスクは変わらずありますし!)。
検査結果が出てやっと、外に出て、生活相談や家探しを本格的に始めることができました。本来なら、もっと早くから始めていればまだ時間的な余裕が持てたはずですが、自主隔離~検査~結果待ちの間はほとんど自宅にいたため、あとでしわ寄せがきて大慌てとなりました…。
以上が、世田谷区のPCR検査を受けた報告です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※4月27日追記
このブログ記事を投稿した翌日(4月27日)に、世田谷区健康企画課・大谷課長より、検査場所に関する記述と写真の削除を求める電話を頂きました。大谷課長とのやり取りは、こちらをご覧ください。