6月19日(土)、埼玉県飯能市の「Alive サステナブルラボ飯能」にて、『木田さんと原発、そして日本』の上映会を開催していただきました。
会場のAliveは、昨年オープンしたばかりの施設です。自然に囲まれたエリアにあるので、これまでの主なアクティビティは屋外だったそうですが、梅雨時のイベントとして映画の上映をしたいと、声をかけていただきました。
その際、「エネルギー問題を考えたいので、上映作品は『木田さんと原発』にしたい」、とも。
Aliveの運営会社、「シンカ」社長の田中裕也さんは、数年前に福島第一原発から2キロの地点まで行き、廃墟となってしまった街の様子を見てきたそうです。
Aliveの名称にも「サステナブル」という言葉が含まれていますが、持続可能な社会を考える際に、原発はその対極にあるようなものです。
Aliveのホームページには、「こだわり」として地域社会との関わりが書かれていますが、大都市で消費する電力を地方の原発でまかなうというこれまでの社会構造も、見直していかなければならないと思います。
そんなわけで、まさにぴったりの場所で『木田さんと原発』を上映していただけることになったのでした。
上映会当日。梅雨時イベントにふさわしく(?)、朝から小ぶりの雨。飯能駅で田中さんたちと待ち合わせし、地元でこだわりの食材を提供するお店から、放し飼い鶏の卵、肉、魚、野菜などを調達。車でAliveへ向かいました。
周辺の景色
かつて林業が盛んだった地域のため、周囲は見渡す限りの森林です。
建設中らしき家も。
Alive外観
この日の上映会は、オンライン(Zoom)でも参加を受け付けていました。私はこれまでに、主に海外の上映で、質疑応答のみオンラインで参加したことはありましたが、”映画”の上映自体もオンラインで行うというのは、初めてのことでした。
到着後、気になる建物内を探索したいところですが、まずは上映とオンライン参加のセッティングを!
無事セッティングと接続テストを終え、施設内の探検開始(^^)♪
2階は和室が3部屋あり、宿泊や作業スペースとなっています(3階は広めの屋根裏部屋で、こちらも宿泊可能)。
テラス
道路を挟んだ向かい側に川があるので、つねに川のせせらぎが聴こえます。
近くに階段があり、河原に降りることもできます。
さて、上映開始時刻が近づいてきました。Zoomの画面には、オンライン参加の方々が入室されていましたが、現地参加の方々がまだ到着しません…!
普段、現地参加のみの上映ならば、事前申し込みをした人の到着具合に応じて、開始時間を少し遅らせる…ということはよくありますが、現地参加とオンライン参加の両方がある場合、どの程度遅らせて良いものかは悩ましいところです。
現地参加ならば、その間、会場の中を見学したり、配布資料を見たり、おしゃべりしたり等、気を紛らわせることはしやすいですが、オンラインでただ待機する状態の場合、同じ10分でもだいぶ長く感じてしまうかもしれません。
オンラインで待機するひと用に、なんらかの5~15分ぐらいのコンテンツを用意しておくのも良いかもしれません。Aliveの紹介動画だったり、私の方で上映作品に関連した映像を持ってくる等。
今回は初めてのオンライン上映でしたが、今後もしまた機会があれば、何らかのコンテンツも準備しておきたいと思います(^^)
さて、開始時刻ちょうどあたりに、現地参加の申し込みをしてくださった方々が到着し、上映会がスタートしました。
冒頭、田中さんからAliveの紹介と今回の上映会の趣旨についてお話がありました。私からもあいさつし、上映が始まりました。
上映の様子
オンラインでは、東京のほか、愛知や神戸からの参加もありました。上映の後、オンライン参加の方も含め、皆さんお一人ずつから感想をいただくことができました。以下に要約をご紹介します:
・早川さんの案内で参加した。6~7年前の映画だが、今見ても状況が変わっていないと感じた。映画の中で、原発事故の影響が5年後10年後に出てきたとき、騒いでも手遅れだという発言があった。現在、国の方針は、汚染除去土壌や汚染水に関して、拡散して処理する方向だ。放射能に汚染されているものが、福島第一原発事故に由来するものなのかどうか、トレースが出来なくなる・分からなくなっていく。だから、私たちは今後、騒ぎたくても騒げないという状況になってしまうかもしれない。やはり、市民がこの問題を追い続け、言い続けないといけない。
・Facebookの案内で、偶然この上映会を知った。印象に残ったのは、「政治家は、一部の国民が犠牲になっても、国全体がパニックになるよりはマシと考えているのではないか」という発言。そして、銀座での街頭演説に人々があまりに無関心な光景。
・仕事の出張で南相馬市に行く機会があった。その際、山間部は放射能に汚染されたままで、国としてももう手を付けるのはやめましょうとなっていることを知って、今までどこか他人事に感じていた原発問題を考えるようになった。
・早川さんの案内で参加した。6~7年前の映画とのことだが、今日性があると感じた。今も経済優先の社会は変わらないし、国民をおざなりにする姿勢も変わらないので、原発に限らず様々な社会問題がこのような形で現れている。木田さんのことをこれまでスーパー・ウーマンだと思っていたが、映画を見て、実は家族の中で様々な葛藤があり、息子や夫との関係など、ひとりの女性としていろんな思いがあったのだということを知った。身近に感じることができた。
・上映会のことは、Facebookで偶然知った。311のとき、子どもは中学生と高校生だった。自分が大学生だったころ、もんじゅが出来たが、私たちの世代は権力に抵抗するのを押さえつけられてきた世代なので、何にも思っていなかった。だから311のとき、ものすごく反省した。子どもは学校に任せておけば大丈夫だと思っていたが、学校では原発はクリーンなエネルギーだというポスターを図工の時間に描かせていた。311後、官邸前にも行ったりしたが、結果的に今の世の中は何も変わっていない。これから都議選があるが、大丈夫かなと心配になる。コロナ前までは上映会を開催したりしていた。この映画をほかのお母さんたちにも見せてあげたい。銀座で紙袋を持って歩いている女性の姿が印象に残った。
・上映会のことは、Facebookで偶然知った。原発は時々関心を持つという程度。やはり忘れてしまうという部分はある。被災難民になったことで家族との葛藤があり、生々しい話が響いた。今、自分ができることは何だろう?と考える。「ハチドリ電力」というのに参加している。再生エネルギーをもっと広げていくために、少しでも何かできればと思う。『Fukushima 50』という映画を観て、原発は人間がコントロールできるものではないと思った。直近では、冬に電力が高騰して、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)を利用する事業者にも大きな影響が出た。持続可能なエネルギーを模索しながら、原発をやめる方向を導き出せないかと考えている。
・3年前『インド日記』を観て感動し、今日は家族で参加した。以前、市議をやっていた。日本の国民性として、熱しやすく冷めやすいという特徴があると思う。第二次大戦のころ、最後の一兵になるまでたたかうと、国全体が熱狂し突っ走った。現在はコロナで、オリンピックを安全だと開催しようと突き進んでいる。コロナの対策は、ワクチンに頼り切っている。毎日100万人にワクチンを接種と目標を掲げているが、ワクチンを打ってどんなことが起こるのか、もう少し冷静に知らないといけないのではないか。
・早川さんとは、4年前に偶然知り合った。過去に『インド日記』の上映会を企画し、対談をしたこともある。時代に合った監督だと思い、ウォッチングしている。私は、普段は国立女性教育会館で活動をしている。そこで企画の手伝いや施設の案内をしている。音楽のプロデューサーとしても活動し、コンサートなどを開いている。
・東京から参加した。私自身は原発に関心がなく、たぶん銀座を歩いていたら、(木田さんの演説を)スルーしていた側だと思う。日本は民主主義だと言いながら、自分たちの手でつかみとった歴史はない。キューバのように、王制を倒して民主主義を勝ち得た国ではない。そういう国だから、やはり権力が強い。でも、テクノロジーの進化で、今日のように離れた場所の人たちも場を共有でき、対話ができる。こういう場は大事。いろんな社会課題があるが、例えば、今日この映画を観て、明日銀座を歩いたら、たぶんチラシを受け取る側の人間になっていると思う。そういう風に少しずつ社会は変わっていくと思う。
・家が近いので参加した。映画の中で、「自民党に入れたいという人は、どうぞ入れてください」という発言があった。だれに投票するでも良いけれど、自分が入れたいという意識で投票するなら良いと思う。でも、多くの人は情報を正しくつかみきれていない。メディアで働く人もサラリーマン。フリーライターでもなければ、上がNoというものはチェックがかかって書けない。システムとして、日本全体ががんじがらめになっている。権力を持つ人は、意図的にそのような状態を作り出しているだろう。明日食べていくためのお金が必要という人は、知らずそのシステムに組み込まれている。よく考えないで投票するというのはもったいないし、残念。
・自然が好きで、東京から引っ越してきた。住むようになって、人間は自然によって生かされていると強く感じるようになった。雷の音も、地震の前の揺れも、東京とは全く違う。ここに住むようになり、自然をもっと大切にしたいと思うようになった。Change.orgなどで、国内外の環境保護に取り組む署名を見つけたら、私は必ず署名をする。家ではなるべくプラスチックを使わないようにしている。全く使わないわけではないけれど、考えながら選んで使っている。スポンジたわしを使わず、ヘチマで食器を洗っている。泡立ちはしないが、汚れは落ちる。近所の人にも、「除草剤は使わない方がいいですよ」とか、トゲがない程度にやんわり言う。家で、沢から水を引いているが、現在止まっている。また沢から水を引いてくる予定だが、今日の映画を観てそれを電力に変えられないか?とひらめいた。出来るかわからないが、やってみたい。木田さんの人生の一部を見せてもらい、刺激を受けた。
・今日この映画を初めて観た。銀座を歩いていても、たぶん(誰かが何か言っているな)と思う程度だろう。サラリーマンをしていると、外の世界が見えにくい。原発や環境汚染などは、技術的なことだから、自分たちが考えることというよりも、選挙で選んだ人たちが考えてやってくれるだろうと思っていた。視野が狭く、勉強不足だったと思う。
参加された方々の感想は以上です。
主催のAlive・田中さんからも感想をいただきました。
・映画を観て、とにかく思ったのは「当事者意識」。当事者であるかないか、この境目には大きな溝がある。木田さんはごく普通の女性。でも、原発事故がわが身に降りかかったら、とんでもない当事者意識で、エネルギーを発揮する。世の中にはいろんな問題があるが、結局、わが身に降りかからなければ当事者意識にはならないし、人は動かない。銀座ですれ違う人たちは、本当に無関心だった。政治への無関心もあるかとは思うが。あの光景を見ていたら、悲しくて涙が出てきた。すべての人がすべての問題に直接触れて当事者になるというのは難しいこと。でも、ひとつの手段として今日のような映画を観るというのは、ニュースを見るよりもずっと実感がわく。大熊町に住んでみるというのはさすがにできないけれど、ならば近くまで行ってみるとか。私も原発の近くまで行ってみて、すごく感じるものがあった。電力の大送電線が東京に向かって走っている姿を見て衝撃を受けた。なるべくリアル・現実に触れてみる。それが難しければ、こうして映像を見る。そういう機会を日本人全員が作る努力をしないと、当事者意識は生まれないのではないかと思った。
数年前の映画ですが、ご覧いただいた皆さんが、現在にも通ずる問題として、そして自分に向けられたものとして受け止め、発言してくださっていることに感激しました!!
どうもありがとうございました!!
上映会後の記念撮影(^^)
さて、オンライン中継はここまでで終了し、Alive会場では交流BBQが始まりました!
BBQの達人による火起こし指導(^^)
良い感じで火の準備が出来てきました!
キッチンでは食材の準備を。
見るからにおいしそうな食材たち…!
ほとんど田中さんが焼いてくださいました…! それにしても、テラスの向こう側は真っ暗。もうじき、ホタルも見られるそうです!
無事、BBQも終わり、一日目が終了しました。
=====
今回は、私もAliveに宿泊させていただいての上映会でした。以下は2日目のレポートです!
朝食の準備。私は味噌汁を担当しました!
ご飯はお釜で。ちなみに、Aliveのお米とBBQ用の竹炭は、毛呂山町の「新しき村」から購入しているそうです!
いかにも体に良さそうな朝ごはん!! 前日購入した放し飼い鶏の卵は、生で、卵かけごはんにして食べてみたら、黄身が超・濃厚でびっくりしました。
朝ごはんの後、片づけをしてAliveを出発。エネルギー問題を考えるアクティビティとして、木質ペレットを製造する「もくねん工房」を訪ねました。正式名称は「協同組合・西川地域木質資源活用センター」です。
事務所内でスタッフの方が説明をしてくださいました。
まず、「もくねん工房」設立のきっかけについてお話がありました。今から20年ほど前、所沢産の野菜(ホウレン草など)が、高濃度のダイオキシンに汚染されているという報道がありました。所沢は、関越自動車道のインターチェンジに近いという利便性もあり、首都圏からの廃材を処理するため、たくさんの産廃施設が集中していたそうです。
当時、「所沢ダイオキシン事件」として大きく報道され、所沢産野菜の不買運動まで起こり、大きな社会問題となりました。
この問題を受け、西川地域(飯能、日高、越生、毛呂山)の木材に関わる業者たちが、各事業者から発生する樹皮や端材等の未利用資源を有効に活用すべきだと、「もくねん工房」を設立しました。
西川地域の製材業、木材卸売業、素材生産者、森林組合の40社が資金を出し合い、協同組合を設立。未利用木質資源から、熱源に利用できる「木質ペレット」の製造を始めたそうです。
樹皮・端材(写真左端)が、粉砕・乾燥の工程を経て、木質ペレット(写真右端)に変わります。
木質ペレット。粉砕して粉状になった原料に、圧力をかけてペレットにします。公共施設(温泉等)のボイラー、一般家庭でのストーブ利用、農業(ビニールハウスなど)での熱利用などに使用できます。
仕組みについて説明を受けた後、製造工場を案内していただきました。
持ち込まれた樹皮・端材。
工場内には、各工程の大型機械が並びます。
この製造工場を建設するのに、約1億円かかったそうです!
協同組合で1億円の設備投資というのは、かなりの負担ではないでしょうか? どうやって資金調達をしたのかお聞きしました。
この協同組合を立ち上げた当時、まだこの地域の林業に関わる業者たちには資金力があった。当時は組合に40社が加盟していたが、現在は10数社まで減ってしまった。持ち込まれる原料も減り、今では工場を毎日稼働させることができない…とのことでした。
また、コロナ禍の影響も大きく受けました。大口のペレット納入先である温泉施設「さわらびの湯」が、コロナで数か月間営業を停止したため、在庫を多く抱えているそうです。
現在は、木材ペレットの新たな活用方法を模索しているそうで、事務所内にはそれらの試作品が置いてありました。今後の新たな展開が期待されます!
「もくねん工房」見学の後は、Aliveから入間川をさらに北上し、上名栗の「西山荘 笑美亭」(せいざんそう・わらびてい)を訪ねました。
地元の西川材で建てられた、素敵な木組みの宿です!
宿の前には、丸太がゴロゴロ。今日は、こちらで薪割り体験をさせていただくそう!! 私は薪割りは初めてです(^^)
まず、オーナーの中村さんがお手本を…
こ、これは…
…「スポーツ」ではないか!!
何度も斧を振りかざす姿を眺めながら、薪割りはスポーツなんだ!と思ったのでした。
突き刺さった斧を外すのだって、なんだかアスレチックみたいですよね?
(これは絶対、中村さんのようにはいかないぞ)と確信しつつ、私も斧を持たせてもらいました。鍬よりも重いし、上から勢いよく振りかざさないと薪が割れないので、思った以上に大変な作業でした(> <)
こういうのはフォームが大事と思いますが、そもそも最初の構え(斧を背中側に持ってくる)をするだけでも、相当な腕力を必要とします。
それでもやり続ければ、斧に慣れ、コツをつかみ、最高のストレス発散になるであろうと思います。でも、私は5分ぐらいですっかり満足してしまい、「薪割りをする」よりむしろ、「薪割りをしている写真を撮る」ことが楽しくて、写真ばかりを撮っていたのでした(^^;)
全く上達しなかった私をよそに、他の方々はみるみる上達していきます。
いやぁ、それにしても、中村さんが薪割りをする姿を眺めているだけでも、十分ストレス解消になるような!
中村さんによれば、これらの薪を民宿のお風呂と暖房に使用しているそうです。毎日ひたすら薪割りをして、1年分の燃料を確保しているのだとか。
薪の原料となる木も、自分で山から切り出してくるそうです。
なんと、東京ドーム1個分ぐらいの山林だそうです!
山林を見てふと、素朴な疑問がわきました。そもそも、これらは木材として出荷するために、数十年前に植林されたものではないでしょうか? 薪燃料として利用するのも良いけれど、木材として販売する方がよっぽど収入になるのではないでしょうか(国産材は高価ですし)?? 素人ながらそう思い、質問しました。
中村さんによれば、現在は木材の買取価格が低すぎて、商売にならないのだそうです。買取の業者に見てもらったところ、40本のうち買い取るとしたら3本くらい、と…! これでは、切り出して市場に運ぶまでにかかるコスト(数十万円)を回収することさえできない、と…!
現在は木材市場が高騰し、高値で取引されているとニュースで報道されていますが、足元の、林業に携わる人たちのところまでは影響が及ばないのか、市場が歪んでいるのか、これではますます衰退してしまうのでは…と思いました。
現在、NHKの朝ドラでも林業がテーマとなり注目されていますが、生産・販売から消費・廃棄までのすべての工程がうまく機能しないと、持続できないのではないか?とも思いました。
まさに、今回の上映会企画のテーマ「持続可能なエネルギー」について、考えさせられる見学・体験となりました。
笑美亭では、お味噌も製造・販売しているそうです。なんと、麹まで手作り!
私も、自家用味噌を作り始めて3年ほどになりますが、さすがに麹は買ってきたものを使っています。
今年の1月に仕込んだ、我が家の味噌。
笑美亭のお味噌はどんな味がするのでしょう? これからいただくのが楽しみです!!
午後、全てのアクティビティを終え、解散となりました。企画・準備・運営をしてくださったAliveの方々、現地参加・オンライン参加をしてくださった皆さま、どうもありがとうございました!!