諸般の事情により(笑)、長らく編集作業を中断していましたが、しばらく前から復活し、編集作業を再開しています。
遅れた作業を取り戻すべく、撮影素材を見返し、書き起こしをする日々ですが、この「制作日誌」を書く作業も、編集作業の重要な一部であると考え、今後また更新して行きたいと思います。
どうぞよろしくお願いします!
前回の「制作日誌」を、いつ更新したのかを調べたら、なんと昨年の10月でした!! 安保法案に反対する学生ハンスト、初日の様子を紹介した記事です。(過去の「制作日誌」をご覧になりたい方は、こちらよりどうぞ^^)。
約1週間にわたって行われたハンストを、私はほぼ毎日通って撮影していました。期間中、現場に行かなかったのは1日だけ。私は、経産省前の脱原発テントに寝泊りをさせてもらい、喫茶店でカメラを充電しながら、撮影を続けました。
学生ハンストだけで1本の映画が作れてしまうのでは?!というほど、た~~~くさん撮影しましたので、今後、数回に分けて、短い動画を数本ご紹介したいと思います。
学生ハンストが行われたのは、2015年8月27日からですから、もう4年も前になります。「4年」という時間は、カラオケ同様、最新でもなく懐メロでもない、情報としては一番「中途半端でつまらないもの」と思われてしまうかもしれません。
しかし私は、4年前に撮影した映像が示唆する、その内容の今日性について、日々驚嘆しながら書き起こし作業をしているのです。
ですので、このブログをご覧になる方々にも、何か感じてくださるものがあればうれしいです!
以上、ちょっと長い前置きでした(^^)
=====
ハンスト開始4日目(8月30日)、「総がかり行動実行委員会」が中心となって主催する、大規模な安保法案反対集会が、国会前で行われました。
学生ハンストは参議院議員会館前で行われていましたが、この日は、国会周辺に集まる人たちにアピールすべく、ハンスト場所を国会正門付近に移しました。
私は、総がかり行動の集会が始まると、ハンストの現場を離れ、国会正門前に設置された演台に向かいました。主催者の発表によると、この日の参加者は12万人。演台周辺は多くの人でごった返し、身動きが取れない状態でした。
私は、演台でスピーチをする人たちをなるべくきれいに撮影しようと、植え込みの高台に場所取りをしました。ここなら、演台より高い位置ですので、周りの背の高い人に邪魔されることなく、登壇者を撮影できます。
小雨が降る中、総がかり実行委員会挨拶&シュプレヒコール⇒ゲストのスピーチ⇒SEALsのコール…と続き、それらの様子を撮影をしていると、私から1メートルほど離れた場所に立つサングラスの男性が、演台に向かって何か叫んでいました。
注意して聞いてみると、「朝鮮人は帰れ!」、「黙れ!」、「安倍首相は最高!」など、どうやら主催者とは真逆の主張をしているのでした。
とは言え、この場所に集まっている多くの人たちは、「安保法案反対!」「安倍はやめろ!」と大声で叫んでいる人たちですから、たったひとり、地声で叫ぶ彼の声は、周りのコールにかき消されてほとんど存在感がありません。
私は、その男性が気になりつつも、撮影を続行していましたが、やがて、集会に参加した一人の男性が、サングラスの男性に向かって注意し、口論が始まりました。
注意した男性は、「集会を妨害しないで」、「ここに来ないで」、「あなたの意見は、今ここで言わなくてもいいものでしょ」などと言いました。それに対し、サングラスの男性は、「安倍はやめろって、お前たちが騒ぐのは許されるのか?」、「ここはお前らだけの場所じゃないだろ」、「日本は民主主義国家で、お前たちが言ってるんだから、俺も別に言ったっていいだろ」と言い返していました。
2人の、決して折り合わない議論を聞きながら、私は複雑な気持ちになりました。サングラス男性の発言は、決して好ましいものとは言えませんが、それを注意する男性の言い分もまた、非常に危険で危ういものだなぁと感じたからです。
2人の口論が始まり、注意した男性が去った後、サングラス男性に私が話しかけ、お互いに撮影し合いながら彼の主張を聞いた映像がこちらです(私はビデオカメラで、男性はスマホでツイキャス中継)。
さて、注意をした男性は、最後に「ヘイトスピーチを言うな!」と叫んでその場を去りました。
ヘイトスピーチ…
撮影から4年たち、その後「ヘイトスピーチ解消法」が施行されて3年たち、果たして状況は「良くなった」と言えるでしょうか?
「ヘイトスピーチ」という言葉は、その後、独り歩きするようになり、「何かに対して文句を言うこと」=「ヘイトスピーチ」という拡大解釈がなされ、むしろ、権力者の側までもが、政治・政権に対する不満を「ヘイトスピーチ」とみなして規制しようとする動きまで出て来ています。
例えば(ちょっと古いですが)こちらの記事⇒「自民党、国会デモの規制を検討「仕事にならない」 ヘイトスピーチPTが議論」
以下、The Huffington Postより引用:
=====
自民党は8月28日、「ヘイトスピーチ」の対策を検討するプロジェクトチーム(ヘイトスピーチPT)の初会合を開き、国会議事堂などの周辺や外国大使館付近での大音量の街宣やデモに対する規制も、ヘイトスピーチと併せて議論する方針を確認した。警察庁の担当者からヒアリングなどを行ったという。MSN産経ニュースなどが報じた。
=====
国会議事堂の周辺で行われる、大音量の街宣やデモに対しても、ヘイトスピーチとあわせて規制をしていく…となれば、総がかり行動も学生ハンストも、すべて「ヘイトスピーチ」の名の下に禁止されてしまいます(> <)
先の参院選で、JR札幌駅前で街頭演説中の安倍首相に向かって、遠くから「安倍やめろ!」と叫んだ男性が、瞬く間に警官らによって排除された…ということが話題になっていましたが、こういった対応も、「ヘイトスピーチと合わせて、大音量の街宣やデモも取り締まる」という路線の延長線上にあると思います。
近頃では、これまで社会的に認められてきた労働組合の様々な活動まで、「威力業務妨害」や「恐喝未遂」として、逮捕&長期拘留が行われています(そのことを書いたブログはこちら)。大企業や雇用主に抗議の声を上げるだけで、逮捕・起訴されるというのは、ほとほと恐ろしい世の中ですが、同様のことが「ヘイトスピーチ規制」によっても、行われる可能性があります。
結局こういう法律は、当初国民が想定したような「朝鮮人は出て行け!」といった”本来の”ヘイトスピーチには熱心には適用されず、むしろ政府に反対する声を押さえ込むために使われるのがオチ。。。
以下の写真は、2015年8月15日に、「反天皇制運動連絡会」(通称「反天連」)のデモに対してカウンターをかける、天皇制を支持する人々が掲げた横断幕。「天皇制、はんた~い!」「靖国、ふんさ~い!」と叫ぶ反天連の主張は、彼らからすれば「ヘイトスピーチ」になるらしい(この時の取材記事はこちら)。
さらに気になるのが、Facebook、Twitter、YouTubeといったSNS企業の動きです。近年の、ヘイトスピーチ規制やテロ防止に対する、世論の高まりと政府の動きに呼応して、SNS企業も規制を強化するようになりました。
ヘイトや犯罪を助長するような投稿を削除し、場合によってはアカウントを凍結する。
…こう聞くと(それは当然だ!)と思う人もいるかもしれませんが、実際には、政治や国際社会の問題について取材し発信するジャーナリストや活動家までも、動画を削除されたり、アカウントを凍結されてしまう人が少なくありません(むしろ、最近はますます増えているような気がします!)。
削除・凍結の理由や決定過程はブラックボックスなので、恣意的に運用される危険性があります。
つい最近では、Facebookが、ヘイトスピーチにまつわる投稿をしたユーザーについて、個人情報をフランス政府に提出することで合意した、とも報道されました。
以下、日経新聞の記事を引用:
=====
米フェイスブックがヘイトスピーチにまつわる投稿をしたユーザーについて、個人情報をフランス政府に提出することで合意したことが25日分かった。仏政府はテロや暴力に関する書き込みでユーザー情報を得ていたが、この範囲を広げる。ネット業界は長く「表現の自由」を重視してきたが、相次ぐ不祥事で政府の介入姿勢が強まっている。
=====
ひえぇ…!
Facebookはいずれは各国の当局と、同様の協定を結ぶでしょう。日本の場合、与党・自民党(つまり政府)が、国会前のデモさえもヘイトスピーチとみなしているわけですから、「安倍はやめろ!」なんて”ヘイトスピーチ”を撒き散らしている人たちは、国家転覆を狙うテロリストとして、個人情報を提供されてしまいそうですね(> <)
ヘイトスピーチ規制やテロ行為防止を口実に、表現の自由&国民の知る権利に対する重大な侵害になっていると思います。
表現の自由に関わる内容を、国が踏み込んで取り締まれる法律は、やはり危険だと思います。
ではどうすればよいのか? (ヘイトスピーチを)言われたほうは、黙って泣き寝入りしろというのか? という人もいるかもしれません。
それに対して私は、消極的な策だと思われるかもしれませんが、「自分たちの声を大きくする方法でやり返す」ことしか出来ないのではないか、と思います。
いわゆる「ネトウヨ」が、ある意味地道に自分たちの声・主張を大きくしてきたように、こちら側も自分たちの主張を大きく発信していく。自分たちであらゆるメディア媒体を持ち、情報発信し、自らの主張を届ける。間違った情報がはびこっているならば、それを上回る情報を自分たちで発信していく。。。
相手の口を塞いでしまったら、それは結局回りまわって、自分の口を塞がれてしまうことになるのだから。
権力者は、国民の声を塞ぐ道具なら、喜んで増やすのだから。
そんなことを考えた、4年前の夏の映像でした。