今年より、在来種の栽培に取り組み、今後、種採りをしていく様子をこのブログで報告すると、これまで何度かお伝えしてきました。
自家採種の第一弾として、のらぼう菜の種採りのため、株ごと引き抜いて追熟させていると書きましたが(その時の記事はこちら)、その後の経過をお知らせします。
株ごと引き抜いた後、家の中で新聞紙の上に広げ、現在10日ほど経過しましたが、もうほとんど枯れています。時間を見つけては、乾燥した鞘を開き、タネを取り出す作業をしてきました。
まだ、全てのタネを取り出せてはいませんが、たった1株から、余裕で2,000粒以上のタネが採種できそうです!
この黒いゴマ粒のようなものが、のらぼう菜のタネです。
鞘の中に、どのようにタネが入っていて、1つの鞘からは、どのくらいの種が採種できるかについては、以下の写真をご覧ください。
鞘は、これぐらいの色に変われば、中の種は熟しています。鞘のそばに置いたハサミは、鞘の大きさを示すために置いたものですから、鞘を開いて種を取り出すのに、ハサミは必要ありません。
ちなみに、株ごと引き抜いたあと、鞘は茎についたままが良いのか、それとも茎から切り離した方が良いのか、については、両方を試した結果、ほとんど違いが分かりませんでした(^^;)。(でも個人的には、茎についたままのほうが、鞘が新聞紙に触れず、空中に浮いた状態になりますので、「風通し」という観点では、良いのではないかと思います)。
鞘を開くと、薄い仕切りを挟んだ両側に、タネが格納されています。
1つの鞘の中には、平均20粒ほどの種が入っています。
種はすでに熟して乾燥しているので、鞘を開くとすぐにポロポロと飛び出してきます。なので、中に格納されている状態を写真に収めるのが難しいのですが、かろうじてこんな感じです(^^;)。
8本の鞘から、これだけの種が採種出来ました!
私は昨年の秋、畑のお師匠さんの一人・大澤さんより、のらぼう菜10株の苗を頂いて育てました。自分一人が食べる分には、それで十分すぎるぐらいでした。なので、私が必要なタネの数は、発芽率を考慮して多めに蒔くとしても、せいぜい30粒あれば間に合います。
ということは、1,970粒以上のタネが余りますので、人に分けてあげることが出来るのです。ひとり20粒ずつ渡しても、100人分ぐらいある、ということです。種採りって、ほんとすごい!!
ちなみに、私の畑では、のらぼう菜に続いて、谷さんにいただいた「ルッコラ」(通称「谷さんルッコラ」)の花が咲き始めていました。これまでは、葉を摘みとっていただいていましたが、花が咲けば、そのあとは種採りです(^^)♪
中央の野菜がルッコラ。小さな白い花が咲きました。花が咲いたものだけ、ひょろっと長く成長しています。
「谷さんルッコラ」は、生育がとても旺盛で、しかも辛みが抜群。先月、私の家に料理人の方が来たのですが、庭でとれた自家製野菜のサラダで、特にルッコラの味と存在感に感動していました(^^)
そんな、自慢の谷さんルッコラですが、花が咲き始めた途端、どこからか虫がわらわらと出現し始め、花芽を食べ尽くしているではありませんか(> <)!!!
虫に食べられた(吸われた?)花は、無残にも枯れていきます…
もう、こいつらには殺意しか湧いてこない!
私は無農薬有機農法で野菜を育てていますから、除草や除虫のための薬品は一切使いません。なので、虫食い被害が起きにくい野菜を育てる(ホウレンソウやレタス等)、虫食い被害のシーズンにぶつからない早生種や晩生種を育てる(枝豆等)、防虫ネットを被せる(しかしこちらは農業資材に費用が掛かるので、無限には揃えられない)…等々の工夫をします。
しかし、ルッコラの栽培は初めてだったので、花が咲くタイミングで天敵が現れるとは知らず、焦りました。ここまで順調に育てたのに、種採りが出来ないかもしれないなんて悲しすぎます…!
無農薬栽培では、ひたすら虫を「捕殺」するというのも、除虫手段の一つです。虫食いが進んだ後では「今さら」感もあり、なおかつ、捕まえてもまた飛来してくる…という「果てしなさ」感もありますが、とりあえず、枯れてしまった上部を素早く茎ごと刈り取り、虫がついたままビニールに入れて密封し、株周辺の地面をうろついている虫は、手で捕まえては袋に入れました。
密封したビニール袋を日なたにおいて、蒸し焼き処分! もうお前ら二度と来るな!と言ってやりたいところですが、「捕殺」は気休めにしかならないのかもしれません(涙)。
ちなみに、谷さんルッコラは、タネを沢山いただいていたので、時期をずらし、2回に分けて、別々の場所に蒔いていました。
1か月ほど遅れて蒔いたこちらのルッコラは、まだ花芽が出ておらず、虫食い被害が発生していません!
こちらの畑のルッコラから、状態の良い株を選んで、種採り用に隔離することにしました!
花が咲く時期に、ルッコラは突然背が高くなる…ということが先行栽培で分かったので、大きくて深めのプランターを用意します。(隣に置いたのは、大きさ比較のための、トマトの苗を植えたプランターです。在来の、タネから育てたトマトなので、まだ小さいのです^^)。
道路の掃き掃除で集めた落ち葉は、ごみ袋に入れていくつか保管しています。プランターの下に敷き詰めれば、土がプランターから流出するのを防げるし、栽培が終わる頃にはちょうどよい腐葉土になって、畑の土として使えるからです。
土を入れます。なるべく、これまでの生育環境が大きく変化してしまわないように、ルッコラ畑の周辺の土を持ってきました。
ルッコラを移植。葉の裏側に虫の卵が産みつけられている場合があるので、そういったものがないか、良くチェックをします。もし、虫の卵ごと移植した場合、今度は防虫ネット「内」で外敵から守られ、ネット内が「虫天国」になってしまいます(> <)!
本当は、畑でのびのび成長させてあげたいけれど、虫被害から守るには、仕方がありません。
すっぽり覆えるサイズの防虫ネットを用意します。
防虫ネットが飛ばないように、大きめの石などを何個か用意します。幸い、私が2年間に及ぶ庭の開墾作業で掘り出した石が、庭の隅に山積みになっていますので、置石に困ることはありません(^^;)
2年間で掘り出した石はこんなに! これらは、私の汗と涙の結晶とも言えますね(大げさ^^)
プランターを防虫ネットで覆い、石を置いて飛ばされないようにします。
完成!
種採り用が3株なのはちょっと心細いかな?と心配になったので、もう1つのプランターにも2株植えることにしました。
無事、「谷さんルッコラ」の種採りに、成功すると良いですが!!!
まだ、種採りの経験はほんの少ししかないのですが、それでもすでに、「種採りまで無事に育て上げること」の大変さを痛感しています。それは、今回のルッコラ然りです。
思いがけない虫や天敵の襲来、天候不順(雨不足、豪雨、台風、大雪など)、鳥、ネズミ、モグラ、ハクビシンなど動物による被害…、長い栽培期間のあいだには、何が起こるか分かりません。
私が一生懸命世話をしても、予防策を取っても、それでも抗えずに全滅する場合もあり得ます。
「種採り」「自家採種」を続けるポイントは、「タネ交換仲間を持つ」ことではないか?と痛感します。
実際、種採りをされている方々にお聞きすると、大抵、離れた場所で暮らす家族どうしでタネを交換しあっているという人の話をよく聞きます。その年の栽培が失敗し、自分は種採りが出来なくても、実家で畑をやっている弟から分けてもらえた…などなどです。
自分一人で、自分の畑だけでは、絶対種採りは継続できない。
私はそう思います。
野菜の種類によっては、タネの発芽期限が長寿のものもあります。そういったものなら、沢山採種できた年に保管しておき、翌年にすべて使ってしまわないで、翌年の栽培で無事採種できるまでは「保険」として保管しておく…といった対策も出来ます。しかし、発芽寿命が短い野菜もありますし、そうでなくても一般に、古い種ほど発芽率が落ちていくので、新しい種の方が良いです。
家庭菜園をやっている人というのは少なくないですが、「在来種」を「無農薬有機栽培」で育て、さらに「種採り」をしている人…と限定すると、だいぶ数が少なくなってしまいます。そして、自分と交流のある人、知り合い…となると、もう数えるほどしか知りません。
う~~ん、なかなか難しいですが、でも、在来種の無農薬栽培&種採り民をどんどん、それこそ国を挙げて増やしていくべきだ!というのが、私のマニュフェスト(笑)です。
…ですが、「タネ」をめぐる国の動きは、ますますおかしな方向へと向かっているようです。
昨年のブログで、日本で唯一、在来の種を専門に扱う種屋さん「野口種苗」について書きましたが(その時の記事はこちら)、そのブログの中で、2018年3月末で「種子法」が廃止になると書きました。
種子法廃止によって、どのような影響・問題が出るのかは、こちらの記事が分かりやすいです。
そして、「種子法」廃止に続いて、今度は「種苗法」の改正(改悪)が検討されているそうです。法の改正について、様々な問題点が指摘されていますが、中でも、農家や個人が自家採種することを禁止するという内容が盛り込まれているのだとか…!
しかも、種苗法違反は、10年以下の懲役、一千万円以下の罰金と厳しい定めがあり、なんと「共謀罪」の対象にもなっているそうで!!!
私は、編集作業をするために、田舎にひきこもる生活を始めて、野菜作りにすっかりはまり、大自然の中で、心身ともに豊かに穏やかに、健康的な生活を送っています(最近勃発した「りべるたん問題」を除く笑)。
今ではもう、「国会前抗議の取材に行く」、「弁護士会館の集会に参加する」…なんてことはほとんどなくなりましたが、こんなところでまた、「共謀罪」にお目にかかるとは!!!
政府が自家採種を制限したい背景には、モンサントなど、グローバル大企業による種子の支配があります。しかし、これは世界的な新たな動きとは逆行しているそうで、国連では、種子の権利や多様な遺伝資源の保全を守ろうという動きが活発になってきており、来年からは「家族農業の10年」が始まり、小規模家族農業を推進するための活動が、世界中で展開されることになっているそうです…!
日本政府の「種子法廃止」「種苗法改悪」は、世界的に見ても、マジキチとしか言いようがない!
「共謀罪」が成立してしまった後、いったい、どの案件で初・逮捕者が出るのかと言われていましたが、「国防」とか「テロ」とか、想定しやすい案件ではなく、もしかして「農」、「農民」かもしれませんよ!
日本政府の流れと真逆に、「在来種の無農薬栽培&種採り民をどんどん増やせ!」と提唱し、自ら実践し始めた私も、自分の思いとは別に、政府の向かって行こうとする方向や、法改正には、注意を払って情報を追い続けていかねばなりません。知らず、法令違反を犯してしまうことにも、今後はなりかねませんから…。
でもそもそも、そうなる前に、おかしな法律には、「おかしい!」と声をあげていかなければなりませんね!
【※参考資料】
種苗法の改正の問題については、以下のブログなどが詳しいです。ご参考ください。
印鑰 智哉(いんやくともや)さんのブログ
「農水省:自家採種を原則禁止に?」
山田正彦さんのブログ
「日本では野菜の種子等が自家採種できなくなることになりそうです」