今年の2月、インドのドキュメンタリー監督、Anupama SrinivasanさんとAnirban Duttaさんが来日しました。
私は、2015年に『踊る善福寺』がデリーのアジア女性映画祭で上映された際にインドに行きましたが、その映画祭の当時の代表がAnupamaさんでした。
年明けに「東京に行くので会おう」と連絡をもらい、会えるのを楽しみにしていました。今回の来日の目的は、AnupamaさんとAnirbanさんが共同監督として制作する映画を、NHKワールドで短縮版を放映するということで、その仕上げ作業(編集の最終仕上げと音声や色調整など)のために来た、ということでした。
約2週間の滞在で、上記の仕上げ作業をするというのは、かなりのハードスケジュールです。実際、東京に来て最初の1週間は、毎日10時間以上スタジオにこもりっきりで、ホテルとスタジオの往復しかしなかったそうです(^^;)。
やっと休みが取れる見通しが出来たときにはじめて、具体的な待ち合わせの連絡がきました。
私は、せっかくなら日本のインディペンデントの映像制作者たちと交流してほしい…と思ったのですが、なにしろ上記の経緯で急に会うことになったので、声を掛けた人の中で、参加できたのは若井さんだけでした。
NHKワールドは、主に海外向けに英語で放送されるチャンネルなので、日本で暮らす人にとっては逆に馴染みがないチャンネルかもしれません。今回、Anupamaさんたちが制作した番組も、海外に向けては3月12日に放送されると決まっていたものの、「日本では放映されるのか知らない」と言っていました。(※追記:NHKワールドのホームページによると、ホームページ上でライブ視聴が出来るそうです。放映後は一定期間、オンデマンドでの視聴が可能。詳細はこちら)。
Anupamaさんたちが制作した作品のタイトルは『A Village Waits』。「Inside Lens」という番組で放映されました。(キャプチャ画面は、NHKワールドの該当ページ)。
ホームページには、作品のあらすじのほか、予告編、制作者のプロフィールやメッセージビデオなども掲載されています。
会うとお茶目な二人ですが、こうしてシリアスなポートレート写真風に写っていると、映画監督の貫禄。かっこいい~(^^)
私と若井さんと、恵比寿で一緒に飲んだ時はこんな感じだったのに(^^)
居酒屋で飲んでいるときに、私は今どんな映画を作っているのかと聞かれたので、簡単に説明しました。すると、Anirbanさんが目を輝かせて、「ワオ、それ絶対面白い! ピッチに出して、ファンディングをするべきだ!」と何度も言われました。
ピッチとは、ざっくり言えば、企画段階または製作途中の映画を、大規模な映画祭などが開催するマーケットでプレゼンし、支援金やスポンサーを獲得することです。(支援金獲得だけでなく、完成後にはその映画祭でのプレミア上映が約束されていることも多いです)。
Anupamaさんたちも、各国の映画祭のマーケットでプレゼンし、複数の支援金を得ました。(例えば、韓国のDocs Port Incheonでは、2017年のベスト・アジアプロジェクトに選ばれ、15,000,000ウォン(日本円で150万円ほど)を手に入れました。
そんな人から「面白い! 絶対応募すべき!」と言われると、ふと(もしかしてもらえるんじゃないかしら?)と錯覚してしまうところですが、そもそも、こういったマーケットで資金を稼ぐというのは、映画祭の上映作品として選ばれ、さらにグランプリを取るのと同じぐらいの激戦なわけですよね(^^;)。
未完成の作品に「お金を出しても良い」と思わせるほど、強いプロットやサンプル映像がないといけません。卓越したプレゼンテーション能力だって必要です。Anirbanさんは、それはそれは大変な作業だと言っていました。それでも、ピッチのために資料を作成するのは、作品についてより深く考える機会となるし、プレゼンすれば海外の映画関係者やバイヤーたちから的確なコメントももらえるし、さらにはお金も…と、苦労を差し引いてもやる価値があると話していました。
なるほど~とは思うのですが、私だったら、時間と労力を割いて激戦のマーケットに挑むよりも、(開墾して畑の面積をさらに増やし、食料自給率を上げよう)と考えます(笑)。
だって、私にはその方がよっぽど現実的だもの(^^)
「インディペンデントのドキュメンタリスト」とひと言で言っても、では、"どのように"インディペンデントでの制作を実現するかは、作り手によって大分違いますね(^^;)
話が脱線しましたが、Anupamaさんたちの作品を観たいなぁ…と思っていたら、なんとYouTubeに番組が丸ごとアップされているのを発見しました!! 早速、鑑賞~(^^)♪
この作品の舞台は、あらすじにもあるように、インド北西部の、ミャンマーとの国境沿いにある小さな村。ここは電気が通っておらず、村人たちは不便な、でも自然と調和した生活を送っています。ところがある日、インド政府の役人がやってきて、「この村に電気を通す」と宣言します。生活が豊かになると喜ぶ村人もいれば、「できるはずがない」「もう彼らを信じたくない」という村人も。
なぜなら、政府の宣言は今回が初めてではなく、村人たちはこれまでに何度も政府に裏切られてきたのです。電気工事に村人も駆り出されても、工事はいつも途中で放り投げられ、作業の手間賃も払われない…。今回こそは電気が通るのか、それともやっぱり通らないのか。村人たちの複雑な心境と、それとは対照的な、自信満々の役人たちのやり取りを追った作品です。
今回の工事でも村人たちが駆り出され、6~7人がかりで電柱を建てようとするシーンが出てくるのですが、その様子はあまりに漫画的でアナログで、素人目にも(これじゃあ電気は通らない)と思いました(^^;)
これ、勝手にアップしてしまっている系の動画だったら、ほどなく削除されてしまうかもしれませんので、興味のある方は早めに観てください(^^)
以上、インドの映画監督、Anupama SrinivasanさんとAnirban Duttaさんについてでした!