今年もまた、静岡の「浜岡原発の再稼働を許さない!! ひまわり集会inしずおか」の石塚さんより、集会で「反原発美術館」テントを展示したいというご連絡をいただきました。
その際、テント内の作品展示について、なにかアイデアはあるか?とも聞かれました。これまでに、井上めぐみさんの写真展、鍋田敏子さんのカレンダーの原画展、青田恵子さんの布絵展などがテント内で行われてきました。
なにか良いアイデアはないかと思い、経産省前テントのメーリングリストで呼びかけをしたところ、函館市の大間原発建設差し止め裁判を支援する方より、「今年の大マグロック(大間原発反対現地集会・反核ロックフェス)で、マグロの絵を描いている人がいた」と教えてもらい、現地で撮った動画を見せていただきました。
実際には、現地でその場で描いたのではなく、あらかじめ描かれた作品だったと後で知りましたが、動画に一瞬映ったマグロの絵は、肌の色味とギョロっとした目が印象的な、とても素敵な絵だったのです!
いったいどなたが描いたのか? 主催者経由で電話番号を教えていただいた方は、宮城在住のアーティスト、土屋聡(つちやさとし)さんという方でした。突然でしたが電話をし、事情を説明し、ぜひこのマグロの絵を、ひまわり集会で飾らせていただけませんか?とお願いしました。
大マグロックで飾られていたマグロの絵(写真は土屋さん提供)
今年7月に行われた大マグロックのチラシ。
土屋さんは突然の申し出にも快く応じてくださり、最終的にはマグロの絵だけでなく、土屋さんもひまわり集会に参加し、反原発美術館テント内外を様々な作品や写真で飾り、なおかつ、当日会場でライブ・ペインティングもしてくださる…という、スペシャルな企画内容となったのでした。(土屋さん、そしてひまわり集会の実行委員の皆さまに感謝!!)
来月、11月17日(日)に開催される、ひまわり集会のチラシです。メインゲストは「おしどりマコ&ケン」さん。
ひまわり集会に向けてのやりとりをする中で、土屋さんは経産省前テントひろばにも来てくださることになりました。小学校の先生をされていた土屋さんは、日の丸君が代裁判の傍聴などで霞が関に来られた際、10年ほど前に経産省前テントにも立ち寄ったことがあるとのことでした。
せっかく来てくださるなら…ということで、急きょ、経産省前座り込みでのライブ・ペインティング企画が立ち上がりました!
テントがまだ経産省の敷地に建っていたころ、「反原発美術館」を立ち上げた際、井上ヤスミチさんと長谷川直美さん、柚木ミサトさんに、テントの布地(内側)にアクリル絵の具で直接絵を描いていただくライブ・ペインティングはやったことがありました。テントが撤去された後は、丸木美術館でテントを再建展示した際、岡志憧さんにも描いていただきました。
これらは、いずれもテント「内部」であるので、外からは観ることはできず、外部からの干渉は基本的にはありません(襲撃などを除いて!)。また、天候にも左右されません。
しかし、テントが撤去されてしまった現在は、経産省正門の目の前で、むき出しの状態で行うことになります。フラッシュ・モブのような一瞬のものなら、あっという間に終わりますが、絵を描くというのはそれなりの時間がかかります。外部からの干渉と雨天時にどうするか?というのが課題としてあります。
天気に関しては、雨天の場合はテントの事務所で行うということになりました。外部からの干渉は、座り込みの人数がそれなりにいれば大丈夫かなぁ…?というぐらいしか対策のようなものは思いつきませんでした(誰からの、どんな干渉かにもよりますし…)。
そうして迎えた当日。天気予報は午後から雨(> <)!
12時半ごろテント事務所を出て、台車に座り込みグッズを積んだメンバーとともに、経産省前に向かいました。
経産省前に到着。台車に積んであるのは、座り込み用のパイプ椅子、脱原発のバナーやのぼり、日よけのパラソル、テントニュースなどの配布物です。
風雨にさらされ、年季の入ったパイプ椅子。
バナー類を取り付けます。
日よけのパラソル。
この場所はかなり強いビル風が吹くこともあるので、パラソルも補強・補修されています。
13時過ぎ、土屋さんが経産省前に到着。直前に連絡を取り合っていた時には、雨となる可能性が高いので、おそらくテントの事務所になるかもという方向でした。でも、曇天の空は、降りそうで降らない微妙な状態。結局、経産省前で、早めに描き上げるということになりました。
描き始める直前の土屋さん。
そう大きくないリュックには、ライブ・ペインティングに必要な道具が揃っていました。絵の具を入れるケースは、絵の具を取り出した後は水入れとして使うなど、コンパクトにする知恵が。
この日、ライブ・ペインティングで何の絵を描くのかは、事前にお聞きしていませんでした。布地や絵の具を広げた後、土屋さんはスマホに入っている写真を見せてくれました。そこには、貫禄のある立派な鶏が映っていました。
その鶏は、大間原発の建設予定地にログハウスを建てて暮らし、建設に反対している「あさこはうす」の「ヌシ」という名の鶏なのだそうです。土屋さんは、ヌシの絵を描くと言いました。
写真を見ながら、下描きはせず直に描いていきます。
絵の骨格が大体仕上がった…あたりのところで、ポツポツと雨が…(> <)
雨に濡れると、塗ったばかりのアクリル絵の具が流れてしまうため、日よけのパラソルとパイプ椅子、ブルーシート、洗濯ばさみを使って、簡易の雨除けを作りました。
簡易的ながら、経産省前に再び「テント」が!!
雨除けの下で10分ほど制作を続けていたところ、案の定(?)、パトカーでやって来た警察官3人が「110番通報があったので…」と言いました。道路で絵を描いていて、ブルーシートを広げて、通行の妨げになっている…といったような内容でした。
制作中、面と向かって通行人から苦情を言われてはいなかったので、その旨伝え、あとは土屋さんがもう少しで完成する、雨が止んだら雨除けは片付ける等話してくださり、警察官は「わかりました」と名前を聞いて去っていきました。
その後、しばらくして雨がやみ、パラソルとブルーシートは片付けました。
だんだんと、絵が完成に近づいていきます。通行人が「息子が絵が好きだから」と写メを撮ったり、「なんで鶏なの?」と聞いたりしてきます。絵の持つ力!
かなり絵が仕上がってきました。ギャラリーの関心は「いつ目を描き入れるのか」(^^)
目を描き入れぬまま、今度は文字に取り掛かります。
いろんな国の言葉で「原発いらない」。Google翻訳を使って描いていきます。
通りすがりの先生と生徒さんたちも、しばらく立ち止まって見ていました。
昔、タテカンの文字を描いていたという男性も、興味深そうに見ていました。
土屋さんが文字を描き入れる様子を、大島さんがカメラで撮影。
「目」以外の部分が完成! あとは目を描き入れるのみ!
目ヂカラのある「ヌシ」が完成!!!!
全体の様子。
土屋さんの署名。
完成作品と共に。
完成した作品を、経産省前テントひろばに寄贈してくださいました。テントひろばに、宝物が増えました(^^)/
この日は金曜日だったので、土屋さんは絵の完成後、17時からの経産省抗議集会にも参加し、スピーチをしてくださいました。その様子を動画で撮影したので、以下にご紹介します。2011年の東日本大震災時、宮城の小学校で被災したこと、今月末に再稼働されようとしている女川原発のこと、そして今回描いてくださった絵のことなどお話しされています。ぜひご覧ください(約16分):
以下は、土屋さんから頂いた「女川から未来を考える会」のリーフレットからの抜粋です:
3.11、女川原発は、大きな揺れと津波により4系統の外部電源を喪失しました。1系統だけ残った電源で、かろうじて福島第一原発のような惨事には至りませんでした。東北電力は原発敷地内に被災住民を避難させ、貢献したと宣伝しています。けれども、女川原発敷地内のモニタリングポストは高い放射線量を記録していました。東北電力は女川原発の敷地が福島原発から飛来した放射能によって高濃度に汚染されていることを知りながら、敷地内にヘリコプターで食糧等の支援物資を搬入し、住民を3ヶ月間もとどめ置きました。住民が原発敷地から出た一週間後、やっと降下物(雨やチリ)の放射線を測定。すると驚くほど高い放射性ヨウ素とセシウム134と137が検出されました。ヘリコプターで食糧を運び入れるより、人を安全な場所に運び出すべきだったのではないでしょうか。
2015年1月27日、女川原発地元で原子力防災訓練が行われました。参加は行政から依頼された極少数のみで、全く現実性のないものでした。原発は事故が起きたら取り返しがつかないのです。原発がなくても電気は足りています。一番の防災は、原発をなくすことです。私たちは、3.11福島と女川から学ばなければなりません。二度と過ちを繰り返してはいけません。
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福島原発事故では、いまだ耳かき一杯分の核燃料デブリさえ取り出せていないのに、被災した女川原発を再稼働しようとする。私たちは3.11福島と女川から学んでいるでしょうか…。
抗議集会の後は、完成した作品をテント事務所まで運びます。
まだ完全にはアクリル絵の具が乾いていないので、事務所で広げて乾かします。
後日、座り込みメンバーの山本さんが、この作品に丈夫なハトメをつけてくださいました。
作品を事務所に置いた後は、テント事務所近くの中華料理屋さんで、土屋さんを囲んで交流会がありました。
土屋さん&テントひろばの皆さん、どうもありがとうございました! 来月の静岡ひまわり集会も、またどんな絵を描いてくださるのか、テントがどのように飾られるのか、今からとても楽しみです。静岡近郊の方、ぜひご参加ください!
以上、土屋聡さん経産省前ライブ・ペインティングのレポートでした!