半世紀ちかく新しき村の村外会員だった小島真樹(まき)さんが、昨年末に突然亡くなりました。2年前、新しき村に村外会員として長期滞在を始め、昨年春には毛呂山町議選にも立候補し…と、近年ますます意欲的に活動されていただけに、突然の訃報に皆が驚きました。
今年2月、新しき村の東京事務所で小島さんを偲ぶ会が開かれ、私は撮影したままとなっていた小島さんのインタビュー映像を、急きょ編集し、偲ぶ会で上映をしました。
昨年の毛呂山町議選に出馬した際、私は小島さんの選挙活動に2日間密着し、1時間ほどのインタビューもしていました。定数14、立候補者15名の選挙戦でしたから、小島さん自身も「当選するだろう」と言っていて、私は当選祝賀会でインタビュー映像を上映出来れば良いなと思っていたのでした。
…ところが、結果はまさかの小島さんだけ落選!!
よって、小島さんを記録した映像も、披露するタイミングのないままとなってしまいました。それがまさか、偲ぶ会での上映となるとは…(> <)
私は編集したインタビュー映像に、インタビュー内でのやりとりから『命の別名』というタイトルをつけました。人生の最期の瞬間まで希望を持って走り続けた小島さんに、ふさわしいのではないか?と感じたからです。
以下は、2023年春、小島さんの選挙活動のときに撮影した写真です。
街頭演説の様子。
新しき村内の、小島さんのご自宅 兼 選挙事務所。
小島さんインタビュー時の様子。
このとき新しき村では、春の花々が一斉に咲いていました。映像の中で、『命の別名』というタイトル字は、この写真の上に重ねました。
村内のあちこちには、武者小路実篤の遺した言葉が刻まれています。実篤は文豪であると同時に、優れたコピーライターでもあったんだなぁと感じます。
今年2月に行われた小島さんを偲ぶ会では、10数名の参加者があり、その方々に映像を観ていただくことが出来ました。その上映を経て、(もっと多くの方に観てほしい)と考え、毎年9月に開催される村の創立記念祭で上映したいと思いました。
村外会員の山田政一さんが、村の専務理事・加藤勉さんに繋いでくださり、創立記念祭で上映が出来ることになりました。7月下旬、会場下見のために新しき村へ。
創立記念祭の会場である、新しき村の公会堂(兼 食堂)。
下見をする前は、公会堂の舞台壁面にプロジェクターで投影すれば良いだろうと考えていましたが、実際の舞台を見て、即座に諦めました。壁面が白または薄色一色ならば投影できますが、これでは無理です…(> <)!
新しき村が数十名の村内会員たちでにぎわっていたころは、大掛かりなスクリーンを設置し、窓には暗幕を取り付け、映写機を借りてきてフィルム上映会をしていたそうですが、それはもう何十年も昔の話。
会場はそれなりに大きいので、それに耐えうる大きさのスクリーンを、自分でどこかから調達してくる必要がありました。
また、スクリーンのほかに、もうひとつ懸念事項がありました。
それは、会場にエアコンがないこと。
村の中でエアコンがあるのは、数々の作品が保管されている美術館だけで、あとはエアコンがありません。
公会堂には、年季の入った動かないエアコンが。額に入った実篤の書や画とならんで、美術品のように存在しています。
会場下見をした日は7月末でものすごく暑く、公会堂でじっとしているだけで汗が噴き出てきました。でも、創立記念祭の9月15日も、きっとまだ残暑が厳しいはず…
最近はクーラーがあるのが当たり前ですから、暑い室内に慣れずに、熱中症になる人がでなければ良いですが!!
一通りの下見を終えて東京に戻り、スクリーンをどうするか考えました。ホワイトボードでは光が反射して見づらいですし、スクリーンを高い天井から吊るすのは大掛かりなので、自立式のレンタルスクリーンをネットで探しました。
80~100インチ程度の自立式スクリーンは、業者にもよりますが、5,000円~20,000円ぐらいでレンタルが可能なようでした。送料は別途で、それは「お問い合わせください」となっている業者が多かったです。
試しに、「2泊3日、80インチ、自立式スクリーン、レンタル代5,000円」と謳っている業者に、見積もりをお願いしました。
すると、レンタル代5,000円のほか、往復の送料が14,000円と!! スクリーンは横幅が2メートルぐらいあるので、一般の小包では送れず、単身者の引っ越し便のようなサービス(ヤマトのホームコンビニエンスなど)を使って運送するのだそうです。だから、こんなに送料が高くなってしまうとのこと。
その業者の所在地は埼玉県と書いてあったので、「なら、自分で車で取りに行けば送料は無料になりますか?」と問い合わせたところ、以降、返信ナシ…。不信感が募ってしまいました。
一度の利用で20,000円ぐらいかかってしまうなら、購入することも考えた方が良いのかな? そう思い始め、新品・中古の両方を探しました。中古でもたくさんのプロジェクター・スクリーンが出回っていますが、詳細を見ると「スクリーンに黒いカビ複数あり、神経質な方はご遠慮ください」とか「スクリーンがたわみますがご容赦ください」とか、いくら格安でもそれは嫌だなぁ…と思ってしまうものばかり(> <)
結局、新品の自立式スクリーンを、ケーズデンキで購入しました。ネット割引や店舗受け取りなどの割引サービスを併用して、26,000円でした。サイズは、80インチか100インチかで迷いましたが、自分の車に余裕を持って乗せられる長さで判断し、80インチにしました。大きな会場では100インチでも小さいぐらいかもしれませんが、今後の使用も考えると、私は20~50人ぐらいの上映規模が最も多いだろうと思うので、80インチで十分だと思いました。
わが家へやって来たプロジェクター・スクリーン!!
「キクチ科学研究所」という、スクリーン専門の会社の製品です。大きいですが、重さは約6キロと軽量。「サウンド仕様」とあるのは、スクリーンの下黒マスクがサウンド仕様となっていて、スクリーン背面にスピーカーや赤外線リモコン対応機器の設置・操作が可能、という意味です。
組み立ては本当に簡単で、30秒もしないうちにスクリーンの組み立てがひとりで出来ました。スクリーンはきれいで、たわみもなく満足。立派な機材をそろえたからには、今後活用していきたいと思います!!
試しに映してみた様子。普段、大きな画面での上映は壁投射が多いのですが、やはり専用のスクリーンへの投射は画面がきれいです!!
スクリーンの問題が解決した後は、上映の案内はがきを作ることにしました。小島さんのお連れ合いの由江さんが、上映が決まったら小島さんが生前交流のあった人たちにも知らせたいとおっしゃっていたので、はがきにしたらお知らせしやすいだろうと考えたためです。
上映のチラシはこれまでにも作ったことはありましたが、意外にも案内はがきを作るのは初めてのことでした。
はがきの寸法に合わせてワードで作ってみましたが、如何にも「ワードで適当に作りました」的なダサいデザインとレイアウトで、自分にがっかりしました(^^;)
どうにかならないものかなぁ…と思いながら、印刷をお願いする「プリントパック」のホームページを眺めていたところ、見慣れない「デザインサービス」という項目があったのでクリックしてみました。
今年3月から新しく始まった「オンラインデザインパック」というサービスだそうで、チラシ、ポスター、DM(ダイレクト・メール)などのテンプレートが業種別に用意されていて、テキストや画像を入れ替えるだけで、ネット上でデザインデータ作成⇒入稿が出来るとのこと。これは便利そう!
「オンラインデザインパック」のページ。
早速このページから、DMのテンプレートを見ました。「用途・シーン」から選ぶこともできれば、「色のイメージ」から選ぶこともできるようです。相当便利!
9月半ばはまだ真夏のような暑さとはいえ、暦の上では「秋」なので、秋らしい色味で選びました。
カフェのオープンを知らせる、割引クーポン付きDMのデザインをセレクト!(上映会と全く関係なし笑)
テキストと画像を差し替え、QRコードを加え、レイアウトを微調整し、1時間もかからずにデザインが完成しました。どことなくカフェDMっぽさの残る上映会案内はがきではあるものの(^^;)、私としては満足!! そのまま入稿し、イメージ通りの印刷が仕上がりました。
ポスターやDVDジャケットは、デザイナーの方にお願いしてこだわって作りたいですが、こういった簡単なDMなどは自分で作れたほうが良いですよね。興味のある方は、ぜひ利用してみてください♬
出来上がった案内はがき。
表面のコスモスの花は、著作権フリーのイラストからお借りしたものです。
新しき村なら、私の自宅から車で約2時間ほどで行くことができますが、実は7月の会場下見の際、向かう途中で車のバッテリーが上がってしまい、2時間も遅刻してしまいました。なので、創立記念祭の前日から毛呂山に泊まり、翌朝の上映に備えました。
当日朝9時ごろ、新しき村へ到着すると、すでに関係者の方々により会場の設営が出来上がっていました(感謝!!)。プロジェクター、スクリーンなどの設置は10分たらずで終わってしまいました。
会場の大きさに比してスクリーンはやや小さめですが、でも良い感じ!
村の告知板。今年で106回目の創立記念祭だそうです!
11時から焼きそばや焼き鳥の販売が始まるため、調理場の方々は大忙し! 最盛期は60名ほどの村内会員が暮らしていただけあり、調理場も広いです。
物販コーナーには、村で生産されたお米、お茶。
村外会員・稲垣さんのチャリティー陶器。お買い得です!!
上映のセッティングを終えた後は、村内の「村外会員の家」で開催されている展示「造形作家 小林雅司の世界」を見に行きました。毛呂山町にある「ギャラリー碌山」の企画です。
伺った時には、ちょうど作家の小林さんが在廊されていて、作品についての説明をお聞きすることが出来ました。小林さんは1970年から5年間、新しき村で暮らしていたそうです。
ちなみに、この「村外会員の家」は、私が小島さんの選挙活動を撮影中に、泊まらせていただいた場所でもあるのですが、その時とは見違えるほどきれいにリフォームされていました! 「ギャラリー碌山」の浅見洋子さん(新しき村の村外会員でもあります)が、相当頑張ってここまできれいにしたそうです! 経緯を知らない人が見たら、素敵な古民家ギャラリーかと思いますよね?!
一角には、小島さんが集めてこられた大量の書籍が、「小島文庫」として保存され、「小島真樹蔵書展」が開かれていました。
小島さんが発行していた一人雑誌「草」。
アーカイブに関心がある私は、どなたかが亡くなると、その方が集めた大量の資料(書籍、ミニコミ、手紙、チラシ、ビデオテープなど、雑多だが社会的価値のある資料)の保存場所がなく、遺族によってやむを得ず廃棄処分される…という事例を見聞きしていましたから、今回、こうして小島さんが集めた書籍や発行した雑誌が、村外会員の家に保存されることになって良かったと思いました。
新しき村を訪ねる機会があれば、ぜひ、小島文庫も覗いてみてください(^^)
個展を見た後は、公会堂に戻りました。まだ上映開始まではだいぶ時間がありましたが、この日は遠方からの嬉しい参加者がありました。栃木県内の就労支援センターに関わる方々が観に来てくださったのです! これまでX(旧ツイッター)上でしかやり取りしたことがなかったので、リアルにお目にかかるのは初めてのことでした(イマドキですね^^)。
その方は、2020年に私が宮崎の日向新しき村を訪ね、松田省吾さんと放牧養豚の様子を撮影した『日々新~早春の日向新しき村』をYouTubeで偶然見つけてご覧になり、センターの利用者さんたちと一緒に鑑賞会を開き、丁寧な感想まで送ってくださったのです!
私は『日々新』の宣伝文として、作品紹介ページに以下のように書いています:
100年続く共同体「新しき村」
昔ながらの、新しい暮らし
就労支援センターは(もちろん事業所によっても異なるかもしれませんが)、仕事や生き方について考える、問い直す場でもあると思います。そんなとき、新しき村が提唱した「1日6~8時間の義務労働を果たせば、衣食住が保障される。あとの時間は、自己を生かすために使う」という理念は、格差がこれだけ広がってしまった現代社会で、なにかしら訴えるものがあると思うのです。それは、亡くなった小島さんも、いつもお話しされていたことでもありました。
ですので今回、新しき村を実際に訪ね、小島さんの映像もご覧いただくことが出来たのは、とてもうれしかったです!
そのほかにも、私が毛呂山に住んでいた時のお友達や、茨城の映像仲間も観に来てくれました。暑い中、感謝!!
上映の前には、小島さんのお連れ合い・由江さんにも挨拶をしていただきました。
真夏日の暑さの中、扇風機が2台。わたし史上、「最も室温の高い上映会」だったことは間違いありませんっ!!
無事上映が終わり、午後13時からは舞台公演がありました。私は前日の、ぜんじろうさん「ユーモア・スピーチ講座」の撮影係だったため、ビデオカメラを持ってきていました。なので、せっかくなら撮影させてほしいとお願いし、舞台の演目を記録しました。
以下より、開会のあいさつ~舞台演目~理事長挨拶~閉会の挨拶をご覧いただけます(95分)。
以下は、舞台演目の様子を撮影した写真です。
実篤のお孫さんにあたる、現・新しき村理事長、武者小路知行さん挨拶。
以下の写真、向かって左側は、「ギャラリー碌山」主宰の浅見洋子さん。
村外会員・松尾欣二さんによる朗読。
出演者が変わるたびに、ビロードの幕がじりじりと上げ下げされる様子が面白くて、舞台袖に覗きに行ってみました。くるくると手動で回して、幕を上げ下げしているのです!
照明と音響のコントロールルームはこんな感じ。
日高ハーモニカクラブの演奏。アンコールもありました!
舞台の演目が終わった後、15時からはビンゴ大会がありました。村のお茶、お米などの景品で、一等賞はお米10キロでした! この夏のコメ不足のなか、とくにうれしいプレゼントだったのでは?
閉会のあいさつの後、無事創立記念祭が終わりました。
様々な方の協力を得て実現した、新しき村・創立記念祭での『命の別名』上映。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!