福島原発事故汚染水(処理水)の海洋放出に反対し、韓国の元大学教授、李元栄(イ・ウォニョン)さんが、韓国・ソウルから東京・霞が関までを徒歩行進されました。
イさんは2023年6月18日にソウルを出発し、約1,600kmという途方もない距離を、86日間かけて徒歩で行進されました。
9月11日は、ラストウォークとして新橋駅前SL広場に集まった日韓の市民が、霞ヶ関までの2.2kmを共に歩きました。
このブログでは、国会議事堂/衆議院議員会館までのラストウォークと、無事徒歩行進を終えた後の李元栄さんの講演を、写真と映像で振り返ります。
下関~霞が関の間で、李さんと共に歩いた方々も、参加できなかった方々も、ぜひご覧くださればと思います。
【映像】放射能汚染水(処理水)放流中止 韓日市民徒歩行進
ラストウォーク(約54分)
【映像】李元栄さんのお話を聴く夕べ~放射能汚染水(処理水)放流中止
86日間の韓日市民徒歩行進を終えて~(約2時間23分)
新橋駅前SL広場(向かって左から三番目が李さん)
出発前、鍬野保雄さんによる挨拶
李さんによる挨拶
この汚染水の放出問題は、政府のメディアコントロールが激しく、テレビや大手新聞は「処理水は安全」という論調ばかりです。
この日は、山本宗補さんや堀切さとみさん、アワープラネットTVの白石草さん、UPLANの三輪祐児さんたちが取材に来ていました。いずれもフリーランスや独立系メディアの方々ばかりで、見る限り、マスメディアはほとんど取材に来ていないようでした。地方を行進された時には、地元紙などで取り上げられたそうですが。
3.11後の被災地の様子も精力的・継続的に取材し続けている、フォトジャーナリストの山本宗輔さん。写真は一眼レフで撮り、SNSなどに載せる短い映像はスマホで撮影しているそうです。
集合時間の14時になると、SL広場の一角には、ラストウォークに参加する大勢の人が集まりました。それを警戒してか、冒頭から警察による介入がひどく、「歩行中は横断幕等を掲げないように」(⇒掲げると示威行為・デモになるので、事前に申請・許可が必要になる)などとしつこく言ってきました。
ラストウォーク、出発直前の集合写真
李さんを先頭にさっそく歩き始めます。李さんの歩くスピードがかなり速いのに驚きました。
あっという間に、東京電力本社前に到着。ここでも李さんはマイクを握り、短いスピーチを。
市民の有志が、東京電力に申し入れ書を手渡しました。
その後、国会議事堂/衆議院議員会館を目指して歩き続けます。
徒歩行進(各自が自由意思で歩く)なのに警察の介入・妨害が激しく、李さんも驚き、呆れていました。
こんなに多数で待ち構える必要があるのでしょうか…(> <)
緩やかな長い上り坂をのぼり、国会議事堂付近へ!
李さんは、もともとは衆議院議長に陳情書と書簡集を手渡すことを望んでいましたが、現在、衆議院議長は入院中とのことで、代わりに衆議院の議事部請願課の担当者に手渡すことになっていました。
李さんら徒歩行進に参加した市民が衆議院議員会館前に到着すると、会館前の狭い歩道はたちまち人であふれかえってしまいました。
一方、歩道のすぐ隣、議員会館の入り口付近には広いスペースがあり、そこには警察官や私服警官が立っているだけでした。徒歩行進に参加した市民全員がそこへ移動したとしても、まだ余裕のある敷地の広さです。
人でごった返す歩道には、事前の約束通り、陳情書を受け取る担当者も来ていました。事前の段取りを交渉された木村さんによれば、議員会館の敷地(写真撮影は禁止されている)では陳情書を手渡す場面の写真撮影ができないから、歩道で手渡すと事前に双方で決めていたそうで、そのことは李さんにもお伝えしていたとのこと。
立派な議員会館の目の前の歩道が、まさかこんなに細い通路だとは、李さんは想像できなかったのかもしれません。(この狭さは抗議活動を自由に大々的にやらせないためのサイズなのかも!?とも思えてきました💦)
李さんは、こんなところでは渡せない、遠くからやって来た客人に対して失礼である、目の前の敷地が空いているのだから、そこで渡したいとマイクを使って言いました。議員会館は、国民の税金を使って建てたのだから、市民のために使わせなさい、とも。
そう訴える李さんの主張は至極当然ではあるものの、それでも「はいそうしましょう」とはならず、関係者が李さんのそばであれこれ議論していました。日本語が飛び交う中、じっと待たされる李さんの表情は、見ていて痛々しかったです。
結局、李さん含む数名だけが議員会館の中に入り、そこで手渡すということになりました。外で待つ市民たちは拍手で李さんたちを送り出しました。
そのたった数名が議員会館に向かう横断歩道も、この警備。信号に従って渡るだけなのに…💦
衆議院議員会館の前にて、中に入る一行の集合写真。
李さんたちは中に入っていきました。
以下の写真は、立ち会った木村雅英さんから提供していただいた、陳情書と書簡集提出の場面の写真です。
衆議院議員会館内の請願窓口では写真撮影ができないということで、結局、社民党の大椿裕子議員の議員事務所(参議院議員会館内)での提出、撮影となったそうです。
陳情書の提出。受け取られたのは、衆議院事務局の議事部請願課、陳情・意見書係、課長補佐・鈴木拓磨さん他1名。
書簡集をスキャンして収めたUSBも提出しました。
書簡集は、86日間、1,600kmの日韓徒歩行進の記録でとても貴重なものです。三分冊になっており、書簡集の原本は、李さんが大切に持ち帰りました。
陳情書と書簡集の提出を終え、大椿議員と記念撮影。
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徒歩行進を終えた後、この日の夜は、日比谷コンベンションホールにて、「李さんのお話を聴く夕べ」という講演会が開かれました。
冒頭、司会の鍬野さんがまとめた、この86日間の歩みを振り返るスライドが上映されました。
講演の最後には、韓国から駆け付けた仲間の方々も登壇し、挨拶されました。
会場の様子
講演終了後、参加者の方々と記念撮影
李さんの講演内容については、ぜひ映像をご覧いただければと思いますが、危険な原子力発電を私たちが使い続けるのか、捨て場のない核ゴミをどうするのか、そして汚染水を海に捨てるとは…といった、原子力発電にまつわるすべての事柄は、要は、「その国に成熟した・機能した民主主義があるのか? 民主主義の土台があるのか?」ということに尽きるのではないか?と感じさせられました。
…となると、日本は韓国にも、その他の国にも、かなり遅れを取っている…と思わざるを得ず、私たちはこんな状況の中で、一体どこから何を始めたらよいのか?と途方に暮れてしまうのですが、講演の中でひとこと、李さんが「汚染水放出に反対して歩くという行動を見せるだけでも、投げかけられるものがある」と言っていたのが救いに感じました。
経産省前を始め、各地で行われている原発反対の座り込みやスタンディング。素通りしていく人も多いけれど、中にはふと立ち止まる人もいます。そういった地道な行動は、きっと誰かに届いている…。
そんなことを思った、李元栄さんの徒歩行進でした。李さんはじめ、日本&韓国双方の支援者・参加者の皆様、大変お疲れさまでした!!