先日、「市民の学習・活動・交流センター シビル」の細田伸昭さんにお誘いいただいて、調布の「クッキングハウス」を訪ねました。
料理教室?と思うような名前ですが、調布で、もう35年間も活動を続けている「不思議なレストラン」なのだそうです。
クッキングハウス・レストラン 外観
クッキングハウスのブログの自己紹介では、この場所について以下のように紹介されています:
人生の途中で心の病気をした人たちも、地域の中で働き、暮らすための居場所として1987年に東京・調布市に設立。
食事づくりを通して、仲間と一緒にご飯を食べたり、語り合ったり、うたったり、旅をしたり、人間らしく暮らすことを共にしながら、希望をもって生きていって欲しいと願い、活動しています。
現在、60人以上のメンバーが交代で、できる作業をできる範囲で担っています。
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レストランは、障がい福祉サービス事業所として、就労継続支援B型の活動をしており、安心して食べられる自然派家庭料理を提供しています。
お店の外に掲げられていた、この日のメニュー
なんと、オリザ(織座)農園のお野菜が使われているではありませんか!!
有機農業や自然食に関心のある人たちの間で、知る人ぞ知る存在の「織座農園」(長野県八千穂村)。今から約30年前、それまで東京で小学校教諭をされていた窪川典子さんが、教師をやめて移住し、当時はまだ珍しかった有機農業を手探りで始め、現在に至る…という農園なのです(織座農園・窪川典子さんのインタビュー記事はこちら)。
実は、窪川典子さんは、私が通っていた当時の小学校の先生だったのです!!!
2009年に、映画『ブライアンと仲間たち』の上映で「安房平和映画祭」に行き、懇親会の席で偶然近くに座った窪川先生(!)と話して、大昔の記憶がよみがえったのでした!!! (その時の衝撃を、当時のブログに書いています⇒こちら)。
その時に織座農園のことを知りましたが、それ以降、実際に窪川先生の作ったお野菜を食べたことはなかったので、期待しながらレストランの中に入りました。
クッキングハウスの理念
理念の中に「メンタルヘルスを共に学び、理解を広げる」とあるように、こちらでは、メンバーと市民がともにメンタルヘルスを学ぶ場として、年に数回、「メンタルヘルス市民講座」を開催しています。
次回「メンタルヘルス市民講座」(10月7日~全6回)の案内は以下:
そのほか、市民のための心の相談日として、週2回、事前予約制・有料で、精神保健福祉士による悩み相談も受け付けているそうです。
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レストランのメニューは日替わりの1種類のみです。
ご飯(玄米・白米を選択)とお味噌汁は1回までおかわり無料。デザートまでついて1,000円(税込み)なんて、自然食なのにありがたいですね!
もちろんどれも美味しかったのですが、初めて食べた織座農園の野菜の濃さ・甘さといったら…!!
私自身、野菜を自分で育ててきましたし、もちろん無農薬・有機栽培で、在来種・固定種のタネで育て、自家採種などもし、最終的には自然農法・雑草農法もやりましたが(つまりは、「一通りはやってみた」感はあるのですが)、そして、これまでにいろんな場所・店で無農薬野菜を食べてきましたが、織座農園の野菜は味がダントツに濃いように感じました。どうやって育てたら、こんな風になるんだろう?! なまじ、野菜作りをしたことがあるだけに、かえって謎です!!
食後のデザート
レストランでは、手作り雑貨も購入することができます。
廃油で作った石けん
アクリルたわしとせっけんのギフトセット
手に取って読むことが出来る本もたくさん置いてありました。個人的に気になったのは、こちらの書籍。人知れず、時代とともに消えていってしまうかもしれない郷土の食文化を、こうして聞き取って書き残しているシリーズがあるんだぁ! これもまさに「ドキュメンタリー」ですよね?
食事の後は、レストランの2階にある「クッキングスター」に案内していただきました。ここでは、自立訓練(生活訓練)の活動をしています。毎週火曜・木曜の「夕食会」、毎週土曜の「昼食会」では、自分たちで献立を考え、買い物をし、料理を作り、自立生活力のアップを目指します。
前日の夕食会の献立が、ホワイトボードに残っていました。
心の不調には、食生活も大きく関わっていると言われています。食生活を改善するだけでも、心の不調がある程度改善するとも、聞いたことがあります。
こうして、栄養バランスのとれた献立を自分たちで考えられるようになり、買い物に行って食材を選び作り方も学ぶ…というのは、自立した生活に欠かせないスキルだと思います。
この日は、この場所で午後1時から「ティータイム」の場となっていました。10数人のメンバーの方々が集まり、お話会。
さすが、「クッキングハウス」という名前だけあって、2階のキッチンも立派です!
2階は、クッキングハウスの事務局でもあり、また、個室の相談スペースもあります。
私もメンバーの皆さんに混ぜていただいて、お話会に参加しました。
お話会の冒頭、初参加の私を歓迎してくださるとのことで、突然、「歌を歌いましょう!」という提案が出て、クッキングハウスのオリジナル曲「不思議なレストラン」を全員で合唱してくださったのです…!
私だったら、歌を歌うなら「少なくとも1週間前までに言っておいてもらわないと無理!」なんですが、皆さんは突然の提案にも動じることなく、アカペラで、歌詞も見ずに歌うのでした…!
それもそのはず、クッキングハウスでは、各種の文化活動にも力を入れて取り組んでいて、つい最近、オリジナルCDが完成したとのことでした。なるほど、だから皆さん歌を歌えるのか…!
歌のあと、私は「ドキュメンタリー映像を作っています」と自己紹介しました。クッキングハウスは先月、NHKのハートネットTVで取り上げられたとのことで、その時のお話しを聞くことができました。
ハートネットTVの「統合失調症を理解してもらうこと 社会とつながって生きること」というテーマで、約1カ月半にも及ぶ密着取材に全面協力し、NHKはクッキングハウスのあらゆる活動を撮影したそうですが、そのわりには、最終的に13分程度しか放映されなかった…というのが残念そうでした。
当事者の方々にとっては不満かもしれませんが、映像に携わっている身からすれば、全国放送のテレビで13分というのは、それでも「良く取り上げられたほう」なのではないかと正直思います。だって、100時間撮影して編集して30分にまとめる(=撮影した素材の0.5%しか使われない)なんていうのは、ザラですから。
そういう、映像の「作り手側の事情」をお伝えしたところ、皆さん少し驚いた様子でした。そのほかにも、(自分が答えたインタビューの)「意外な部分が使われていて驚いた」とか、(長時間のインタビューに答えたのに)「ほんの少ししか使われなかった」とか…
どれも、「ドキュメンタリーあるある」ですよね(> <)!!
撮る側と撮られる側の、認識や期待値のずれ。これはもう、作り手と被写体がそもそも別の人間なのですから、どうやったって防ぎようがないです(←開き直り?!)。また、撮られる側の期待する内容の通りに作ったら、イコール他者から見て面白い作品になるのかというと、そういうものでもないですし…。
そしてまた、作品への事前の期待値が高ければ高いほど、出来上がったものへの不満や違和感も大きくなるような気もします。作り手側の勝手な言い分(!)としては、撮られることに最低限の協力はしてくれつつも、完成作品に対してはさして期待していない…ぐらいでいてもらうほうが、双方に良い結果(作品)となるのかも?とも思ったり。
思いがけず、作り手と被写体との関係について、考えさせられるお話会でした。
お話会のようす(細田さんが撮影してくれました)
お茶会の後は、1階のレストランスペースで、毎月第一水曜日に開催されている「キミ子方式で絵を描く」を見学させていただきました。
「キミ子方式」を初めて知りましたが、使う絵の具を4色(赤・青・黄・白)に限定し、下描きをせず直接描き進めていくやり方なのだそうです。ユニークなのは、「植物ならば、成長の順」に、「動物ならば毛の流れ」にそって描いていき、絵が画用紙の中に入りきらなければ、画用紙を足して大きくし、逆に、画用紙に対して小さな絵となったら、画用紙の余白を切って絵に合わせる、というもの。
講師の松本一郎さん
見学…のつもりが、細田さんと私も参加させてもらえることに! 絵具&絵筆なんて、もしかしたら中学生以来かもしれません?!
使う絵の具は4色のみ
絵具は、どのぐらいの量をパレットに出し、筆はどんなふうに使うか・洗うかなど、具体的に説明してくれるので、誰でも絵が描けるのだそうです。
この日は、「空」をテーマに描く、でした。空というと、単純に「青」と思ってしまいますが、実際に空の写真をよく見てみると、空の色にはグラデーションがあり、上空は青が濃く、下にいくにつれて青色は薄くなっていきます(これは大気中の塵の、光の反射具合が影響するのだそうです)。
それを絵で表現するにはどうするかということで、やり方を説明していただきました。
恐る恐る、説明の通りにやっていきます。早くも先生の見本とは違って、かなりのっぺりした感じの青空ですが…💦
それでも、絵筆を進めていくと、空色のグラデーションが、それなりに私にも表現できたではありませんか…?!
青色のムラが気になる部分をカバーするために、「雲」を描きます。こちらは、先生による見本。
雲の輪郭部分を絵筆でぼかすと、雲のふわふわ感がでます。なるほど~~~
雲を描いたら、最後に「樹木」を描きこみます。こうすることで、空の高さや距離感が表現できるそうです。
木々を描きこむ細田さん(^^)
みんなの作品が完成した後、先生が作品を壁に飾ってくれました。なかなか素敵!
絵を描き終えた後は、お土産を買って、クッキングハウスを後にしました。廃油で作ったせっけんと、「ティールーム・クッキングハウス」(レストラン近くにある手作りスイーツのお店)のシフォンケーキとフロランタン。こちらも添加物不使用で、優しい味でした。
最後に、この日に頂いた資料のうち、クッキングハウスの紹介リーフレットをスキャンして掲載します:
興味のある方は、ぜひ、不思議なレストラン「クッキングハウス」を訪ねてみてください♬