(※以下の記事は、「アーカイブを考える」という連続コラムの第3回目です。初めから読みたい方は、以下よりご覧ください)
連載#1:「アーカイブの家~その記録、ゴミか資産か?~」
連載#2:「続・アーカイブについて考える ~永久保存が可能なメディア?!~」
前回(連載#2)の記事では、PAL方式で撮影した過去のMiniDVテープを、Macを使ってキャプチャをする道筋が出来た、20本ほどのテープを無事キャプチャした…というところまでレポートをしました。
あの記事を書いた当時(2021年1月)は、その後すべてのテープのキャプチャを終えるのに、まさか1年半近くの歳月を要するとは、思ってもみませんでした💦💦
今日は、その後450本のMiniDVテープのキャプチャをして気が付いたことや、長期の保管をするうえで、(何がベストかは、最終的には時間の経過によってしか証明されないものの)、現状考えられる”ベター”な選択肢はなにか?という考察を、私の実践も交えて書きたいと思います。
テープの一部(箱のあるもののみ)。箱に入っているものは、一度出し、テープ番号&日付順に並べなおします。タッパーに入れていた箱のないテープは、浅めの段ボールに収納しました。
そもそも、コロナ禍のひきこもり時間を利用して、これまで懸案事項だった「MiniDVテープのデジタル化」という作業に取り組んだのでしたが、それは同時に「アーカイブ」について考える機会にもなりました。
私は、2006年の終わりごろから映像制作を始めましたが、最初の数年ほどは、とにかく「映画」(作品)を作ることに精一杯で、「アーカイブ」としての重要性はほとんど(まったく💦)認識していませんでした。
それが、記録をすることは「作品」を作るためだけに重要なのではない、記録したものすべては、そのまま時代・風俗の貴重な記録・財産でもあるのだ…と思うようになったのは、自分が撮影してきた人が亡くなったり、集っていた「場」が失われたりする経験をし始めてからでした。
具体的には、イギリスならばブライアン(2011年没)や国会議事堂前の反戦運動の拠点(2012年に撤去)、日本に帰国してからは、映画『さようならUR』に登場する畦地豊彦さん(2012年没)や中川京子さん(2018年没)、解体された高幡台団地の73号棟(2015年)、強制執行された経産省前の脱原発テント(2016年)、最近では、「りべるたん」のメンバーだった四元百合さん(2020年没:四元さんは、あまりにも突然の早すぎるお別れでしたが> <)、そして「りべるたん」という場そのもの(2019~2020年)など…。
これまで、当たり前のように近くにいた人や集っていた場所が、突然もしくは徐々に失われていく…。そういう経験を何度かして、当たり前と言えば当たり前のことですが、(これは大事な記録なんだ)と実感するようになりました。
それからは、まず撮影したデータをきちんと保存・保管することを心がけ、そして将来的には、それらが私個人の財産にとどまらず、撮影された側の人・団体や「社会」によっても共有されてほしい、記録をした者としてその「道筋」までは自分で作りたい…と思うようになりました。
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さて、そんなことを考えながらの、MiniDVテープキャプチャ作業。以前書いたとおり、テープメディアの取り込みは、1時間の素材ならば単純に同じ時間(=1時間)がかかります。ふだん仕事をする作業机の上でキャプチャ作業をすると、そのかん他の作業が出来なくなってしまうので、専用のキャプチャスペースを設けました。
IKEAの踏み台を利用(^^;)。上部にMacbookを置き、下部にMiniDVテープのキャプチャ機を置きます。
キャプチャ中の映像は、パーラメント・スクエアの平和運動を支持していた、ロンドンの女性団体のケリーをインタビューした時の映像。(わざわざ「パーラメント・スクエアの平和運動を支持していた…」と書いたのは、女性団体の中には、必ずしもブライアンの言動やふるまいについて全面支持という人ばかりでなく、マリアのような後方支援をする人たちによって、ブライアンの抗議活動は成り立っていると思う人たちも少なくなかったからです)。
ケリーは20代の学生だった頃に、グリーナム・コモンの反核運動に参加し、キャンプに滞在していた経験があります。
ドキュメンタリー映画『グリーナムの女たち』でも描かれたこの運動は、イギリスのグリーナム・コモン空軍基地へ、核ミサイルが配備されることに反対した全国・世界から集まった女性たちが、基地周辺でキャンプをしながら長期にわたって抗議活動をつづけた…というものです。
私がイギリスに留学していた当時、イギリスの女性運動で中核を担う女性たちの多くが、何らかの形で昔、グリーナム・コモンの抗議キャンプに関わった経験を持ち、その時の強烈な経験がその後の彼女たちの生き方に影響を与え、社会運動の在り方にも大きな影響を与えていました。
私はこの日偶然、ケリーもグリーナム・コモンの抗議活動に関わり数年間キャンプに滞在していたと聞き、急遽、抗議活動に関わったいきさつやエピソードなどをインタビューさせてもらったのでした。
MiniDVテープをキャプチャしながら、ところどころ聴きましたが、今聴いてもとても新鮮な内容でした!
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その他、様々なテープを撮影した順にキャプチャしながら、(これは今すぐご本人に渡さなければ!)と思うものがいくつもありました。
ふつう、ただ撮影しただけの無編集の映像素材は、長すぎて&脈絡がなさすぎて、他人にそのままお渡しできるものではありません。でも、映っている本人(または家族・近しい人たち)ならば、無編集でも見ていられるし、中にはその映像に価値を感じてくれる人もいるのでは?と思うのです。(結婚式や運動会の映像がそのよい例かもしれません?!)
編集するとなると、渡せるまでに時間がかかってしまい、今はそれに取り掛かる時間も余裕もないのですが、無編集でも良いならば(ただし、作品として完成したあとのものに限りますが)、その人に密着取材させてもらった際の撮影素材を、そのままDVDなどに焼いて差し上げたいと思っています(希望される人には特に)。
映画で使うインタビューというのは全体のごく一部なので、私が映画の中で生かせなかった or 尺のために泣く泣く削った貴重な映像を、その人自身が何かに使いたい・生かしたいならば、それは私にとってもとてもありがたいことなのです。
そう考えて、キャプチャ作業の合間に、何人かの映像は無編集の状態でDVDにし、ご本人へ郵送しました。
映画『ブライアンと仲間たち』に登場するおじいさん、バニーの家を訪問した時の無編集映像を焼いたDVD(3枚組6時間!!)。本人用とご家族用に2セット焼きました。(後日、受け取ったバニーからは「コロナ禍で娘と孫に会えていないが、DVDで自分の姿を見てもらえた」と手紙をもらいました)
もう一人、『ブライアンと仲間たち』に登場するキャロリンにも、ご自宅を訪問しインビューをさせてもらった時の無編集映像を、DVDに焼いて送りました。彼女は、私のその後の作品にも興味を持っていたので、英語字幕が付いている他の作品のDVDも一緒に送りました。
以下のテープは、2008年8月に、日本に一時帰国していた時のもの。8月6日に広島を訪ね、岡田恵美子さんの被爆証言を撮影させてもらいました。
この日は、様々なイベントが平和記念資料館内外で行われていました。そのなかでふらっと立ち寄った会場で、岡田さん他数名の証言が行われていました。私が会場に入った時点で、もうすでに被爆証言が始まっていたので、私はそのままカメラを回しはじめ、イベントの後で「撮影させてもらいましたがよいですか?」と聞きました。
撮影を事後快諾してもらい、むしろ「多くの方に広めてほしい」とまで言ってもらえました。私は「DVDにして送ります!」と約束したまま…なんと、今日まで送っていなかったのです(> <)!!
今回、その時の約束を思い出し、ネットで岡田恵美子さんの近況を調べると…
なんと、昨年4月に84歳でお亡くなりになっていたのでした(そのことを伝えるニュースはこちら)。。。
あぁ、十分時間はあったはずなのに、なぜもっと早く送らなかったんだろう!
後悔してもどうにもなりませんが、広島で平和運動に関わり、岡田さんの通訳などをされていた車地かほりさんに連絡をしたら、「ぜひ送ってほしい」と言ってくださったので、早々に準備し、今度こそ送りたいと思います。
以下は、映画『さようならUR』で登場するUR高幡台団地73号棟の取り壊し問題について、初めて知ったときの映像。
住まいの問題をテーマに映画を作りたい…と思って、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の設立1周年集会(2010年)に参加した際、発言した村田さんのお話を聞き、初めて高幡台団地の問題を知ったのでした。
こちらも、1年弱撮影を続けていたので、撮影素材がた~くさん(^^;)!! 以下は、元73住民畦地豊彦さんの畑に、中川京子さんとジャガイモ掘りに出かけた時のものです。
畦地さんも中川さんも、もうこの世にはいませんが、映像には元気なころの姿がしっかりと記録されています。つくづく、MiniDVテープがキャプチャできなくなってしまう前に、こうしてデジタル化出来て良かった…と思いました。
こちらは、宇都宮健児さんが、2012年東京都知事選に初出馬したときの映像。開票の結果を待つ選挙事務所にて撮影したもの。(まだ開票結果が分からない時点だったので、皆さんの表情が明るい…)
これらは大事な記録、時代の記録…という実感は持ちつつも、やはり500本近くのテープをキャプチャし続けるのは、時々心が折れそうになりました。
それでもやっと、ラスト5本のところまでたどり着きました! 10年以上前の、中古のキャプチャ機でしたが、よくここまで壊れずに走り続けてくれました!!
MiniDVテープをキャプチャし(デジタル化し)、ブルーレイに焼いたディスクは128枚にまでなりました。それぞれのブルーレイは二層(50GB)のディスクに焼いているので、相当なボリュームです。
やっと全部終わった、解放された~~!!と喜びたいところですが、キャプチャ作業を始めてからしばらくして、「部分的に漏れがある」という問題に気が付いていました。
Windowsでテープのキャプチャをした場合、(キャプチャで使用するソフトにもよるのかもしれませんが)、キャプチャしたデータは、「キャプチャのスタートを押してからストップを押すまで」で、ひとつのファイルになります。
一方、Mac+iMovieを使ってキャプチャをすると、ビデオカメラで撮影していた時の録画スタート&ストップごとに、ファイルが自動的に分割され保存されるのです。ファイル名は、撮影日時を含めて自動的に生成され、テープのカウンターまで表示されるので、こちらのほうがWindowsより便利だと思いました。
Macでキャプチャをすると元テープのカウンターが表示されますから、キャプチャ後に再生確認する際に、「キャプチャの漏れ・飛び」が部分的に発生していることに気が付きました。
キャプチャ漏れは、テープの状態に起因するのか、それともキャプチャ機に原因があるのかは、いまだにわかりませんが、漏れが生じた部分を再度キャプチャすれば、2回目はきちんとキャプチャされる場合もあれば、何度やっても同じ部分がなぜかキャプチャできない…というケースもありました。
ちなみに、「映画には使わないだろうけど、念のため撮影しておく」というような場合(内輪の会議などの撮影に多い)、当時は長く撮影できるLPモードで記録していました。今回、キャプチャ作業をして気が付いたのは、LPモードで記録したテープは、再生時にブロックノイズが見られるものも少なくなく、キャプチャ時にエラーになることも多かったです。今更ですが、LPモードは使わない方が良かったですね。
全テープについて、キャプチャ漏れが生じていないかチェックし、ノートに記録します。
ノートの記録をもとに、再キャプチャが必要なものはキャプチャをしました。
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さぁ、今度こそやっと終わり!…と思いたいところですが、ここでまた新たな問題が浮上しました(> <)。
キャプチャ作業の途中で、経産省前の脱原発テントを初めて訪問した時の映像を見つけたので、昨年のテント設立記念集会の際に、「お蔵出し映像」として編集しようと思いました(編集した映像・記事はこちら)。
Macでキャプチャしたファイル(mov形式)を、普段編集で使用しているWindowsのPCで編集しようと取り込んだ際…
なんと、Windowsの編集ソフトでは、ファイルの読み込みができなかったのです!!(Windows PC上では再生のみ可能で、編集は不可)。自分が持っている3台のWindowsで試しましたが、3台ともダメという結果に(> <)。
Windowsの編集ソフトでも、ふだん、movファイルも読み込めるのですが、movファイルにも様々な種類が存在するのか、Macでキャプチャしたmovファイルは読み込めませんでした。
WindowsとMacの互換性については、昔から問題でしたが、最近はほぼ解消されてきた…と思っていたら、思わぬところでまだ互換性の問題があったのでした。
以前のブログでも書いたことがありますが、私は今回、MiniDVテープのキャプチャ作業をするためだけに中古のMacを購入しました。でも、今後もMacを保持し続ける(=Macが壊れたらまたMacを買う)というのは、「ない」だろうなと思っています。
なので、Macでのみ問題なく再生&読み込みができ、Windowsでは再生しかできない…というファイルでは、将来、また困る事態になるだろうと予想できるのです(> <)
そこで、まだ今、そう古くないMacを持ち、それが快適に動作するうちに、Windowsと互換性のあるデータに変換しておくべきだと考えました。
幸い、どうやったら互換性のあるデータに変換できるかは、すぐに方法が分かりました。Macに搭載されているムービー再生アプリ(Quick Time Player)で、データの形式や解像度などの変換が簡単にできるのです!
そのことを詳しく解説したページが、Apple社のホームページにありました。Macで一般的なmovファイルを、Windowsでも使えるH.264(mp4)ファイルに変換できます。
上記ページより抜粋紹介:
MacのQuickTime Playerアプリケーション で、「ファイル」>「書き出す」と選択し、「書き出し」メニューからオプションを選択します。
「互換性重視」を選択して、ムービーをH.264フォーマットで書き出します。
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この方法で変換したファイルは、Windows環境でも問題なく再生され、編集ソフトでも使用することができました(^^)/
ただし、手放しでは喜べなくて(映像編集って、こんなことの連続ですから、自然と用心深い性格になっていきます^^;)、変換前と後のデータを詳しく見比べると(プロパティなど)、変換によって、様々な付随するデータ情報が失われてしまうことが分かりました。
まず、H.264に変換することで、パッと見は何の変化も感じられなくても、データサイズは半分以下となり、音声などもかなり圧縮されているということがわかります。
さらに、Macでキャプチャしたオリジナルのmovファイルには表示されていた、テープのカウンターコードが失われるので(ゼロにリセットされる)、テープのどの部分をキャプチャしたのかという情報が分からなくなってしまいます。(Macでキャプチャをした際に、自動的に付与されるファイル名に日時が用いられているので、それでかろうじてデータ(ファイル)の順番は狂わないで済みますが)。
以前、デジタル化に関するシンポジウムを聴きに行った際、業者の方が「オリジナルの媒体にはオリジナルにしかない付帯情報が含まれているので、デジタル化が終わった後も、オリジナルを可能ならば捨てないで保存し続けて!」と言っていたのを思い出しました。(ちなみに、「再生機器も捨てないで!」とも言っていました。今では製造・販売されていない再生機器は、壊れていたとしても大事なもの。後々の、いざという時のために持っていた方が良いとのことです)
上記のような事情もあり、最終的に私は、オリジナル(テープ)、Macでキャプチャをしたmovファイル、Windows互換用に変換したmp4ファイルの3種類を保管することになりました。(movファイルのmp4変換も、すさまじいファイル数でしたので、すべて終えるまでに数か月を要しました)。
デジタル化を終えたMiniDVテープと、MiniDVテープのキャプチャ機は、今後はもう基本的には使うことはないため(デジタル化したファイルをなにかで利用したい場合は、保存したブルーレイやHDDからデータを取り出せばよいので、元テープにあたる必要はない)、これらは段ボールに収納し、取り出しにくい奥の方へしまいました。
段ボールには、中身が一目でわかるよう、内容を付せんに書いて貼りつけました。
キャプチャ機のみ保存することとして、壊れたPAL式のMiniDVカメラは捨てることにしました。
…とはいえ、これまで共に戦ってくれた愛機を捨ててしまうのは忍びないもの…
カメラ自体は壊れてしまったものの、カメラストラップは思いのほか状態が良く、損傷がなかったので、2年前に購入した新カメラ(グリーン)にストラップを受け継ぐことにしました!
思いが受け継がれるようで、うれしい(^^)!
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さて、Windows用に変換したmp4ファイルをディスクに焼いて保存するとなったとき、ひとつ思うところがありました。
オリジナルのmovファイルを保存する際、データ容量が多いので、二層のブルーレイ(50GB)に焼いていましたが、その後ネットでちらっと「二層は剥がれてくる」という記述を見たのです。
私自身は、DVDでも二層は使う機会が少なく、ましてや、「長期保存の末に剥がれた」という経験はしたことがないのですが、ディスクという構造上、貼り合わせた層がやがて剥がれてくるというのは、ありえなくないことに思えました(これは三層についても同じ)。
ならば、容量は少なくても、「一層」に保管しておいた方が、「剥がれ」によるリスクは避けられるのではないかと考え、変換したmp4はブルーレイ一層(25GB)に保存をすることに決めました(幸い、データも圧縮されて小さくなっていましたし)。
保存に使用したのは、PanasonicのBD-Rです。ブルーレイは、DVDに比べて記録面を覆う膜が薄いので、記録面が傷つかないよう、「トリプルタフコート」のシリーズを愛用しています。
この製品は、記録時のエラーが生じたことがほぼ皆無で、ずっと気に入って使ってきたシリーズでしたが、残念なことに、Panasonicは今年の3月、パソコン周辺機器の製造から全撤退してしまいました。現在、この製品はもう製造中止となっているので市場の流通量が少なくなってきており、ネット上では価格が上昇してきています。
現代は、「ディスク」なんて時代遅れで、手軽な「ハードディスク」などに保存する人がほとんどだと思います。保存性の観点から言えば、ディスクの方が安定していると思うのですが、需要が減ればメーカーが撤退するのは当然のこと。ディスク派としては悲しいところですが!!
(ちなみに、業者レベルでは「磁気テープ」への保存が一番安定し、容量も大きく、なおかつ保存にかかる電気代なども抑えられると言われ、再注目されていますが(そのことを紹介したFUJIFILMの記事はこちら)、こういった業務用の大容量磁気テープの導入には、最低数百万のコストがかかると言われているので、そもそも大企業・大組織向けであり、個人に向けた話ではないのです。もちろん、10年先、20年先には個人にも手に届くものになっている可能性もゼロではありませんが、少なくとも今は)。
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さて、一層のブルーレイディスク(トリプルタフコート)に保存をすると決めたら、今度は気になってくるのが「筆記用具」です。
以前、アーカイブに関するブログ記事で、ディスクの盤面に「ボールペン」で記入をしたら、滲んでほとんど解読不能になってしまったと書きました。
以下の写真は、滲んだ部分はボールペンで記入したものです。(滲んでいない部分は、油性ペンで今回補足的に書き足したもの)
昔は、スーパーやコンビニの文房具売り場に「CDマーカーペン」や「ディスクペン」と呼ばれる商品が並んでいました。ディスクの盤面に記入することを想定したこれらのペンは、15年以上たった今も、にじむことなく当時のままです。
ディスク専用ペン(向かって右)と、そうでないペン(同左)では、時間の経過とともにその差が歴然…!
ならばもちろん、記入はディスク専用ペンで行いたいところですが、「ディスクの衰退」という時代とともに、現在ではお店でディスクペンを見つけることは困難になってしまいました。
店舗になくてもネットなら…と期待して、ネットで検索すると、かつてはPILOTなどのメーカーが「CD・DVDマーカーペン」を販売していましたが、現在それらは「販売終了」と表示されています。
かつてはどこでも気軽に購入できたディスクペン。入手が困難となった今、長期保管を見据えて、どんなペンを使えばよいのでしょうか? 思い切って、PILOTのお客様センターに相談してみました。
以前販売していた「CD・DVDマーカーペン」(MFD-15EU)の後継製品はあるのか?という質問に対し、丁寧にお答えいただきましたので、該当部分を引用して紹介します:
===
この度は、ご愛用頂いておりますCD/DVDマーカーペンにつきまして、お問合せいただき誠にありがとうございます。また、生産中止に伴い、御迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
後継品に関しましては、現時点で同じインキを採用したものはなく、ご案内できる情報がございません。
また後継品という意図ではご案内ができませんが、インキの定着などの面で弊社としてご案内しておりますのは「濃いピタインキ」を搭載した製品です。
■ツインマーカー
https://www.pilot.co.jp/products/pen/sign_marker/oil_based_aqueous/coil_twin_marker_gokuboso/
ビニールなどの非浸透面にも書くことができ、インキの定着性も優れております。
しかしながら、非浸透面の上に一枚の膜のように張り付いた状態でございます事から、機械の中で剥がれ、機械そのものの機能に影響を及ぼす恐れもございます。
そのような懸念がございます為、CD/DVDマーカーペンの後継という意味ではお勧めはできませんが、類似品としてご案内差し上げます。
CD/DVDマーカーの永らくのご愛用誠にありがとうございます。
この度は明確なご回答ができず誠に申し訳ございません。
今後とも弊社製品にご愛好賜りますようお願い申し上げます。
===
以上が、PILOTお客様センターから頂いた回答でした。類似品を紹介してくれたものの、回答の本文にもあるように、「機械の中で剝がれ、機械の性能に影響を及ぼす恐れもある」とのことで、ディスクマーカーペンとしては、使用することが難しそうです。残念!!
現在はもう、「CD・DVDマーカー」として販売されている商品はないのだろうか? …そう思って引き続き検索を続けると、ヨドバシカメラのオンラインショップの、とんでもなく深い階層にありました!
「トップ > 文房具・オフィス用品 > 文房具・学用品 > 筆記具>マーカー・蛍光ペン > 油性ペン 通販 > …」と辿ると、「定着性・耐光性抜群! CD、ガラス、陶器など様々なものに書ける”ルモカラーペン 超極細書きS”」という商品が出てきたのです!
聞いたことのない商品名でしたが、詳細を読んでみると、「STAEDTLER(ステッドラー)」というドイツのメーカーのもので、「定着性と耐光性に優れ、CDなどのディスク類をはじめ、ガラス・陶器・OHPフィルムになど様々なものに書くことが出来る超極細油性マーカーです」と書いてあります。「OHPフィルム」というのも時代を感じさせる言葉ですが、今でもディスクペンを製造してくれてありがとう!と、思わずPC画面にお辞儀をしてしまいました(^^;)
もちろん迷わず即購入です! ペン先が「超極細」とのことですから、すぐにつぶれてしまうだろうと考えて、とりあえず3本購入してみました。
1本330円でした。ペンにしてはお高めですが、「MADE IN GERMANY」の安心感?!
それでは、使ってみてのレポートを…と行きたいところですが、なんとこちらのペン(3本とも)、数枚記入を終えるとかすれ始めてくるのです(> <) 全く使い物になりませんでした!!
一方、AmazonでもCD・DVDマーカーペンが販売されていて、こちらは中国製。1ダース(12本)送料込みで千円と、逆に心配になってしまうほど格安な料金…。
でも、(これも勉強)と思って購入してみることにしました。マーカーペンとは謳っていても、果たしてディスクに優しい&長期保存に適したインクを使っているかは不明ですが。
ところが、今度は注文後1か月経っても、全く届く気配がありません(> <)
Amazonの履歴を見ると、すでに中国から発送済みとなっています。どうしたものかと思い、Amazonに連絡をすると、自動的にキャンセル&返金扱いとなりました。
…しかし! 2か月後、すっかり忘れたころにペンが届いたのです!
Amazonではすでにキャンセル&返金処理が完了していたので、無料で購入できたことになります!!
こんなに必要なのかわかりませんが、12本入り。
日本語の説明書きはありませんが、「紙、布、木、CD…」などOKそうなことが分かります(^^)
早速こちらのペンを使って、ディスク盤面に記入をしてみると、インク量がむしろ多すぎるぐらい(> <)
ドイツ製も中国製も、どちらも良さそうとは正直思えませんでした(> <)
これらの結果から思うことは、「ディスクの盤面に書く情報は、最小限にとどめておいた方が良い」ということです。ディスク用と書かれているペンでも、そのインクが「ディスクにとって優しい」とか「長期保存にも耐えうる」という観点で開発されたものかは分かりません。単に、「滲まない」だけの場合もあり得ます。
ですから、滲んで文字が判別できなくなるボールペンなどの使用は論外として、なんらかの油性ペンでディスク盤面に記入する場合、管理のための「ディスク番号」と、「ディスク作成日」(もしくはその素材が撮影された日)程度、さらに付け加えるとしたら「大雑把なタイトル」ぐらいにとどめておいた方が、もし時間の経過によってインクの成分が悪さをしたとしても、その被害は最小限にとどめられるのでは?と思います。
決して、以前の私のように、ディスク盤面をインデックスカード代わりに全面記入してはいけませんよ(反面教師)!!!(^^;)
ディスク盤面に直書きする情報は、管理・判別のための最小限の情報にとどめ、その他の詳細情報は、市販のインデックスカードに記入して、ケースに差し込むのが一番良いのではないかと思います。
ちなみに、ブルーレイなどのディスクの注意書きには、ディスク盤面への記入については、以下のように書かれています:
「柔らかい油性フェルトペンを使用」…とあるだけです。
ご参考までに、「水性ペン」だとどうなるでしょうか? 定番・ロングセラー商品の、ぺんてる「サインペン」(水性・黒)。
こちらもディスク盤面に使用していた時期が長らくありましたが、今回、キャプチャ作業の際に見てみたら、5年ほど前に記入した文字がうっすらと滲んでいました。ボールペンより滲みはひどくありませんが、小さな文字でびっしり記入していたりしたら、判読が難しくなっていたかもしれません。
これら、皆さまの参考になれば良いですし、皆さまからの情報も随時お待ちしておりますっ(笑)!
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さて、MiniDVテープのデジタル化作業が終わったあとは、未整理だったDVDやCDなどの分類・整理です。
イギリスに置いてきたままだったDVDやCDを、整理のために送ってもらった後、そのままさらに1年以上放置していました💦
しかも、それらのディスクは、スペースの節約のためにケースには入れておらず、ぺらっぺらのビニールに入れていたのでした(現在の私が見たら悲鳴をあげるような保管状態!!)
ビニールが劣化し、破けています…
以前にも書きましたが、最初に購入したJVCのビデオカメラはハードディスク記録式(SD画質)だったので、その頃の記録映像はDVDやCDに焼いていました。…ということは、オリジナルの原版DVDやCDを15年近くこの状態で保管していたことになります!
これら、よっぽど怪しい贈り物にみえたのか、珍しく税関で開封されていました(^^;)
さて、まず私が最初に取り掛かるべきことは、ディスクの枚数を数え、ディスクケースを購入することでした。
撮影データを焼いたDVDは、オリジナルに加え、コピーも作成していました。なので、原本とコピーを同じディスクケースに収納したら、保管及び検索がしやすいのではないか?と考えました。
こちらのディスクケースは、厚さ5ミリの薄型ながら2枚収納ができるそうです。
ビニール袋からディスクを取り出し、記録日順に並べます。一番古いディスクは、2006年のCD-Rでした(恐る恐る再生してみましたが、再生できました!)。もう作成から15年以上たっていますから、今度は光学ディスクの寿命も気になってくるところですが(しかも保存状態が悪かったですし!)、保管場所のスペースと作業時間の関係で、今はこれらディスク類に関しては分類・保管作業のみにして、複製作業はしないことにしました(将来の宿題)。
コピーがあるものに関しては、原本に「Copyスミ」と書かれています。
原本とコピーは、全く同じ情報が盤面に記入されています。これ、転記するだけでも大変な作業だったでしょうね。
ブライアンの撮影素材(原本&コピー)はこれだけありました。
ふつうは、2枚収納のディスクケースならば、以下のように正副のディスクを収めようとするかもしれませんが…
そうすると、ケースを閉じた際、表側に来るのが記録面になってしまうので、ケースをわざわざ開かなければ中身が確認できません。
それでは不便なので、記録面どうしが隣り合う形で収納します。
そうすれば、ケースを閉じた際に、ディスク盤面が表側に出るので、ケースを開かなくても、中身がわかるのです。(収納の際は、ディスクの記録面の汚れを、傷がつかぬようメガネ拭きクロスなどで拭き取ります)。
(これはいける!)と思って、どんどん正副のDVDディスクを2枚収納ケースに入れていったのですが、途中で(スリム過ぎて、記録面どうしが密着しているかも?)と感じました。
記録面保護のためには、ディスク(特に記録面)がケースの中で「浮いた」状態になっていることが好ましいです(なので、密着する不織布ケースなどは良くないです)。
今回、せっかく保管しなおすのですから、ディスクにとって良い状態で保管するべきだと考え、スリム2枚組収納をやめることにしました。(たくさん購入した2枚組収納ケースは無駄にならないよう、片側にだけ1枚のディスクを収納するケースとして利用)。
当初、2枚ずつ収納できると目論んでいたので、ケースが足りなくなり、以降は1枚収納ケース(スリムタイプ)を何度か買い足しました。
ディスク収納ケースのほか、ディスクケースの収納ボックスも追加購入。
以前のブログにも書きましたが、収納ボックスは、私はニトリの「マルチ収納Mワイド」(1,456円、ディスクはスリムケースの場合約80枚ほど収納可能)で統一しています。別にどこのお店で購入したものでも構いませんが(特にニトリ推しというわけではありませんが!)、百均やドンキでは規格・商品の移り変わりが激しいと思うので、ニトリ、カインズ、無印良品など、シンプルでベーシックな商品を息長く販売しているところのほうが、その後の「買い足し」「収納の統一感」には便利だと思います。
ブライアンの撮影素材DVDの整理の後は、そのほかのランダムな撮影素材やデータ資料の整理です。それらは、百均の不織布CDアルバムなどにいれて保管をしていました。
形も大きさも違う不織布アルバムケースからディスクを取り出し、それぞれ1枚ずつケースに収めていきます。
例えばどんな素材があるかというと…
2007年イギリスに留学中、スコットランドのエディンバラで毎年行われる演劇祭「フリンジ・フェスティバル」に旅行兼取材で行った時のもの。
当時、日本ではまだあまり知られていなかったパントマイムのパフォーマンス・ユニット「が~まるちょば」が、日本からフリンジ・フェスティバルに参加していたので、1時間弱、独占インタビューをさせてもらった時のデータ。(「が~まるちょば」は、2021年の東京オリンピック開会式で、ピクトグラムのパフォーマンスをして話題になりましたね)。
以下は、2008年、ロンドンのLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)にて行われたイベントの映像。日本からやってきた活動家たちが、夏に洞爺湖で開催されるG8サミットに、ヨーロッパからもカウンターとして参加してほしいと呼びかけるイベントでした。(細字は私が今回追記した補足情報)。
ある意味、イギリスで「社会運動デビュー」(?)をした私は、日本の社会運動や抗議活動についてほとんど知らなかったので、この呼びかけに呼応してその年の夏に一時帰国し、洞爺湖まで抗議活動を取材しに行ったのでした。
保管しているディスクは、自分が撮影したものばかりではなく、他人から譲り受けた資料もかなりあります。例えばこちらのディスク。
盤面には「Channel 4 Political Awards 2007」とだけ書いてあります。これでは、将来わたしからさらに第三者の手に渡った場合に、意味がすぐに分からないので、自分で以下のように書き足しました。
ディスクを整理しながら、上記のように、「他人が見ても理解できる」よう、適宜、自分が知りえる情報を書き足していくよう心掛けました。
その他、文字が滲んでいるものに関しては、油性ペンで書き直したり、日付が盤面に記入されていないものは、ディスクを再生して日付を調べたりetc。
PARCでアーカイブに関する講座を受講した時に学んだことですが、アーカイブというのは「すべてを残すこと」とは限らないのです。何を残すか、何を処分するかの判断基準を持ち(この基準は必ずしも客観的な基準とは限らない)、それに基づいて分類・整理・処分し、本当に残したいものがきちんと残され、引き継がれていくようにする…というのが、「アーカイブ」本来の目標・役割なのだろうなと、講座を受けて思うようになりました。
私の場合、まだその判断基準は細かくは詰められていませんが、現時点ですでに言えるルールのひとつは、「大量に出回っている市販のもの」(=お金を出せばだれでも買えるもの、大量に世の中に出回っているもの)は、私がアーカイブとして取っておく必要はない、というルールです。
例えば、自分が好きで集めていたBBCのコメディ・ドラマのDVDや、有名歌手のCDなど。これらは、何万本、何十万本と市販されているでしょうから、私が生きている限り持っているだけで良い、と。
一方で、例えば各国の映画祭に参加して、現地で知り合ったインディペンデントの作家から直接もらった映像作品のDVDなどは、一般には手に入らないので貴重です。例えば、言論統制の厳しい国(イランなど)の作家たちが地下活動で制作したドキュメンタリーなどは、研究・歴史資料としても価値が高いでしょう。
…ざっくりとですが、こんな基準で、他人から提供された(もしくは自分で購入した)ディスクについては分類・保管する(将来的には廃棄も含む)…というように考えています。
自分が記録した映像や写真については、「現時点では全保管」で、今後は用途や目的に応じて、再整理・再分類、最低限の編集などをして、他人も利用できる形にしていきたいと考えています(これが出来るのは、またずっと先の話かもしれませんが!)。
ちなみに、ルールがあってもそこにぴったり収まらず、(う~~~ん)と悩むものも多いのです。例えば、市販のCDだけれど、それにメンバーのサインをしてもらったものとか(笑)!
とまあ、将来の作業についてもぼんやりとイメージしつつ、これら多種多様なDVD・CDを、日付(撮影日もしくは購入時期等)ごとに並べます。
ごちゃまぜのディスクを、年ごと、月ごと…と並べていきます。
泊りがけで撮影に出かけた月は、ディスクの枚数もがぜん多くなります。
これらを、ニトリの収納ボックスに格納していくのですが、収納ボックスの外側にも、中身が一目でわかるように、幅広テープにサインペンで内容物を記入して、ラベルのように貼ることにしました。
ガムテープでは、収納ボックスにべったりシール痕が残ってしまうと考えたので、養生テープを使用することにしました。ガムテープよりも養生テープの方が価格が高いので、コスト抑制と興味本位で、百均の養生テープも購入してみました。
以下の写真、向かって左側が百均、右側がニチバンの養生テープです。
モノによっては、百均とそうでないものの実力には、今やほとんど差がなくなってきている昨今ですが、養生テープの場合は如何に…???
百均の養生テープは、これまでに使ったことがなかったので、いきなり信用することはせず、百均の養生テープに内容物を書き、その下地にニチバンの養生テープを貼ることにしました。
収納ボックスの見やすいところに、まずニチバンの養生テープを貼り、その上に、百均の養生テープを貼ります。
(後日談ですが、百均の養生テープは、まず見るからに薄く強度に欠けていましたが、上映会の際、延長ケーブルの固定のために使用したら、剥がす時にすんなり剥がれず、粘着剤が床やケーブルにこびりついてサイアクでした! 百均の養生テープは、お勧めできません!!)
私は下地にニチバンを敷いているとはいえ、ラベル部分は百均の養生テープを使用してしまったので、今後これらのラベルは書き換えようと思います(> <)
…とまあ、まだ課題は残りつつも、とりあえず以下のように整理・分類ができたのでした!!!
これらの収納ボックスを、MiniDVテープ同様、使う頻度が多そうなもの、少なそうなものに分け、押し入れに収納しました。
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…ブログ記事自体もものすごく長くなってしまいましたが、以上が、私が1年半以上にわたって取り組み続けたデジタル化&アーカイブづくり初期段階のてんまつです。予想外に長い時間がかかってしまい、ここまで終えた頃にはまるで映画を1本作ったかのような疲労感がありました(^^;)
デジタル化も大事ですが、現時点で自分の手持ちの資料に何があるのか、引き出しがどれだけあるのか、その全体が確認できたのも大きな収穫でした。
PARCのアーカイブ講座で言われた、大事なこと:
「アーカイブの作業は、活動期間中から行う」
「アーカイブ」と聞くと、「過去のもの」「書庫の整理」みたいに思われるかもしれませんが、必要な資料をどんなルールに基づいて整理・処分するかは、今現在のプロジェクトでも(でこそ!)必要で、それは仕事を効率よく進めることにもつながりますよね?
机の上に未整理の書類が山積み…では、本人はよくても、第三者にはカオスすぎてわからず、せっかくのお宝が埋もれてしまって、もったいない!
今回の一連の作業を通じて、(アーカイブって要はそういうことなんだな)と、実感をもって感じたのでした。
以上、「アーカイブを考える」シリーズ連載#3、「長期保存に耐えうる素材選びとなるか?!」でした! ここまでお読みいただき、ありがとうございました(^^)/