10月より、私が現在暮らしている集合住宅の、空き地部分の管理を引き継ぐことになったので、そこを畑にして野菜を育ててみることにしたと書きました(その時のブログ記事はこちら)。
それからまだ1カ月半しか経っていませんが、本来畑ではない場所を畑にする、私有地ではなく共有地でそれをする…ことで思いがけず見えた現実や出会いがありました。
今日は、この1カ月半の振り返りを書きたいと思います。
前回のブログでは、石ころだらけの空き地を耕し、生ごみコンポストのたい肥を入れ、種まきをした、やせた土地ながらも発芽した…というところまで書きました。
私は以前、埼玉で家庭菜園をしていた時、発芽して以降も秋口まではほぼ毎日、畑に水やりをしていました。ですが、現在通っている農業研修で、「プランターで栽培する場合を除き、発芽した以降は水をあげてはダメ」と教わりました。
水をあげない(=甘やかさない)ことで、植物は自分で水を得ようと、地下深くまで根を下ろすように成長していくのだそうです。それなのに、しょっちゅう水をあげてしまうと、植物は(水をくれるんだ)と考えて、自分で根を伸ばす努力をしなくなってしまいます。(ただし、夏場にひどい日照りが続く時は、最低限の水やりは必要です)。
まるで人間のよう(?)ですが、丈夫な強い野菜を作るには、暑さで日中萎びれているときでも水やりはせず(夜露で野菜は復活します)、自らが水を求めて成長していくように見守るのが肝要なのだそうです。
土づくりがされた畑ならまだしも、やせた石ころだらけの土地で、水やりを一切しないというのは不安がありましたが、農業研修の先生の言葉を信じて、発芽後は水やりを全くしませんでした。
今年は10月も、11月に入っても、けっこう暑い日が続き、土の表面はカラカラに乾いているように見えました。それでも、少し掘ってみると、1センチほど下の土は湿り気があるのです。(なるほど、これならたぶん大丈夫)と水やりをしないまま観察しました。
すると、弱弱しい小さな苗ですが、枯れることなく、日々少しづつ大きくなっていきました。
発芽直後のころ。
それから1週間ほどで、ネットが邪魔になるぐらいまで成長しました。
ネットを外しました。
土壌の酸性度に敏感で、発芽が難しいとされているほうれん草も、きちんと発芽しています!
混みあっている部分を間引きしました。
さて、もうひとつの管理するエリアは、どうなったでしょうか? こちらは、北東で日当たり時間が短いエリアです。半分は種まきし、もう半分はプランターの苗を移植した部分でした。
日照時間が短いからか、タネ蒔きの発芽はあまり進んでいませんでしたが、移植した苗は定着し、ゆっくりと成長しています!
さらに1週間後。かなり大きくなっているのが、わかるでしょう?
ケール。キャベツの原種で、青汁の原料でもあります。アブラナ科なので、虫に食われやすいはずですが、まったく食われていません!
チンゲン菜。まだ小さいながらも、姿かたちはチンゲン菜になってきています!
毎朝、階下に降りて行って、野菜が育っていく様子を楽しみに観察する…はずが、この頃からちょっと嫌なことが起こり始めました。
竹酢液を薄めて撒いていたので、ネコによる被害は全くなかったのですが、人間による被害(いたずら)が起こるようになっていたのです。
1列に7株、全6列(=42本)の苗を移植したはずですが、数日おきに1~2本、根元からポキッとおられ、その場に捨てられる被害が出始めました。
最初のうちは、(たくさん苗はあるんだし…)と思ってやり過ごしていましたが、相手はだんだんと大胆になるのか、面白くなってくるのか、折られる間隔が短くなり、本数が増えていきました。
私は日中は良く通りかかって、畑の様子を観察しています。日中には折られたことはなく、大抵は朝いちばんに被害の苗を見つけます。おそらく、人目のない日没後~夜間にやっているのでしょう。
子どものいたずらなら良いですが、この辺りは子どもの姿をほとんど見かけないので、たぶん大人ではないかと思います。共有地で、自分の野菜を育てている、それがだんだん大きくなっていく…というのが、面白くないのでしょう。
私は自分が必要な野菜は、農業研修のおかげで、毎週食べきれないほどいただいています。なので、この共有地の畑は、ここで暮らす人たちにこそ食べてほしいものだし、もし興味があるなら近隣の人なら誰でも加わって、一緒に育てたい&出来上がったものは収穫して食べてほしいと思ってやっています。
…とはいえ、ただ野菜を植えているだけでは、そのあたりのことは伝わらないので、小さな看板を作ってみました。
畑の、見やすい位置に挿しました。
その後、2日間ぐらいは何も起こりませんでしたが、3日目にはこの小さな看板が引き抜かれ、無造作に打ち捨てられていました。
しばらく、看板の引き抜き⇒元に戻す⇒また引き抜かれる…というやりとりが続き、その後はまた野菜を折られる被害が出始めました。
野菜が大きくなっていくにつれ、だんだんと荒らし方も大胆になっていきました。根ごと引き抜き、その場に一晩打ち捨てられては、もうこの気温では植物は完全にダメになってしまい、翌日にまた埋めてももう元には戻らずに死んでしまいます。
毎朝、このような光景を見るのは、私自身もとても悲しく、心まで折られるような想いでした。
いたずらを続ける人に、こんな「黒い楽しみ」を与えるのは、きっとその人にとっても良くないな…と思い、収穫にはまだ少し早い状態でしたが、この一角の野菜を収穫することにしました。
なぜか、ケールばかりがやられ、チンゲン菜は残っています。でも、これも時間の問題で、いずれやられていたでしょうね。
サバイバー・チンゲン菜たち!!
沢山収穫できました!!
半分はご近所さんに差し上げて、残り半分を自分で食べました。
今回、水やりを全くしないで育てたほか、肥料も全くやらずに育てました。本来なら、途中で追肥をしながら育てますが、嫌がらせできちんと育てる意欲がそがれていたほか、家のことでバタバタしていて余裕がなかったせいもあり、結局肥料をやらないままに来てしまったのです。
それでも、ここまで大きく育ち、しかも虫に全く食われていないというのは、驚くべき結果でした。(その後、成分が有機であれ化学であれ、肥料・栄養をやると虫が付きやすく、病気になりやすいとも知りました)
サバイバー・チンゲン菜を食べてみると…
よく、スーパーで売っている野菜は「味がない」、有機農法の野菜は「コクがある、味が濃い」などと言われますが、この、空き地で無農薬・無肥料で育てた野菜は、ごくあっさりした味わいでした。
味がない、ではなく、あっさり。
野菜にもよるかもしれませんが、私はふと、(これが自然な野菜の味では?)と思えたのでした。
虫に食われず、味も良い…。むしろ、無肥料・無農薬栽培こそが最善なのではないか?と思えました。肥料が要らないなら、お金も手間もかかりません。しかも、味も良い。空き地で貧乏人が野菜を育てて自給するのに、一番ふさわしい農法ではないでしょうか!
…ということで、現在は図書館で「自然農法」に関する書籍を借りてきて、どのように空き地に応用できるか、にわか勉強中です(^^)! 肥料やたい肥の力に頼る有機農法と違って、自然農法は、より野菜の性質や周辺環境・生態の知識と観察が必要で、奥が深く、面白そうです!
さてさて、いたずら被害に遭っていた畑は収穫しましたが、南西の畑はどうなっているでしょうか?
…なんと、こちらはまったくいたずら被害に遭わず、すくすくと成長しています!
のらぼう菜と菜の花は、ともにアブラナ科の野菜なので、本来ならば虫の大好物ですが、まったく虫食いの被害がありません!
ほうれん草も立派に育っています!
雑草が侵食しているので、草取りをしてきれいにしました。(今、読んでいる自然農法の本によれば、雑草は土壌の表面を保護する役割があるので抜かない・共生するとも書いてあるので、今後、自分のやり方も変えながら実験していきたいと思います)。
私が管理する空き地は、北東と南西で、それらは建物の側面(北東)と前面(南西)の隣り合った土地です。
なぜ、一方の畑は荒らされ、もう一方の畑は全く荒らされないのでしょうか?
一番大きな理由として考えられるのは、「人の目」です。
荒らされた畑は、建物の側面にあるので、窓がなく、人の目がほとんどありません。一方、荒らされなかった畑は、建物の前面にあるので、ずらりバルコニーが並んでいます。この建物のバルコニーから、常に見渡せるところにあるのです。
私のバルコニーから見た南西の畑。
隣り合わせの、地続きの場所でも、人目のある・ないで、これだけの違いが出ているのだと思います。
北東の日当たりが悪い場所でも、サバイバー・チンゲン菜のように、野菜は立派に育ちますが、空き地での野菜栽培は、陽当たり以上に「人目」が重要なのだと痛感しました。
あともうひとつ、面白いと思った現象があります。
被害に遭い続けた北東の敷地で、なぜか被害に遭わない野菜があります。それは「パクチー」です。
何度も被害に遭ったケールなどと一緒に植えていたのに、パクチーだけは被害に遭いませんでした。
(なぜだろう…)と考えていたら、隣の、タネを蒔いたエリアにヒントがあるように思いました。
こちらは前述したように、タネを蒔き、防鳥ネットを被せて置いたエリアですが、日照時間が短いので発芽や生育が遅く、雑草も生え始めています。
雑草に囲まれた、小さなサニーレタス。
この状態を見て、いたずらをする人はおそらく、パクチーを「雑草」と思ったのではないか?と考えました。だから、パクチーには何もしなかった、と。
現在、北東エリアの、タネ蒔きをした部分は、ネットを外し、雑草とともに野菜を育てている状態です。見た目が雑然としているので、野菜を育てているようには見えず(もちろん、野菜を育てたことがある人にはきちんとわかるレベルですが)、今もここはまったくいたずらをされていません。
雑草と共生する、野菜の自然栽培という方法は、「人間によるいたずら」対策としても有効かもしれませんね?!?!
そんなわけで、来春以降は、この北東エリアは、雑草とともに野菜を育て、野菜の種類も雑草と見分けのつきにくいハーブ類(ルッコラなど)を蒔いてみようかと考えています。まあ、メインは南西のエリアで、この北東エリアはそんなにがんばらず、ほどほどに実験する感じで行きたいです。(頑張ってきれいにすると、またいたずら心をくすぐってしまいますからね^^;)。
空き地の管理を始めたことで、いたずらに遭い、心が折れる日々が続きましたが、一方で、うれしい出会いにも恵まれました。
畑作業をしていると、通りすがりのご近所さんたちが足を止め、話しかけてきてくれるのです。30分ほど立ち話をすることもあれば、差し入れをいただくことも、何度もありました。
差し入れの柿。
「きれいにしてくれているから、あなたの分も通販で頼んだ」という、ヨモギ餅をくださる方も!
こんな出会いは、空き地の管理・野菜作りをしなかったら、きっとなかっただろうと思います。
皆さんももし、猫の額ほどでも空き地があるのなら、そこで無農薬・無肥料栽培をされてみませんか?! 畑じゃなくても、びっくりするぐらい、簡単に野菜が栽培できますよ!!
ただし、本来畑ではない場所を畑にする場合、その土地がそれまでどのように使われていたのかを知ることも重要です。雑草対策として除草剤をまいていたり、もしくは何らかの化学物質で汚染されている危険性だってあります(豊洲市場の敷地のように!)。
私の場合は幸い、私の前に管理をしていた住民さんが、ここに新築で入居して以来、半世紀(!)近くこの場所で花を育ててきた(除草剤使用ナシ)とわかっているので、安心して畑に利用しています。
以上、「空き地を畑に!」その後のレポートでした!