2019年6月28日、渋谷でおそらく初めての、「路上飲酒行列」なるデモが開催されました。主催したのは、「渋谷区の路上の自由を守る会」。渋谷区議会が可決した「路上飲酒禁止条例」(正式名称は「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」)に反対し、路上でお酒を飲む自由を訴えながら、渋谷の街なかをデモ行進しました。
チラシ
路上飲酒を禁止する条例の、何が問題なのか? この条例の問題点について、同会が渋谷区議会へ提出した陳情書を、以下にご紹介します。
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2019年6月11日
公共の場所での飲酒や音響機器使用等を規制しないよう求める陳情
渋谷区議会議長 下嶋倫朗様
渋谷区の路上の自由を守る会代表 和田拓磨
※住所省略
陳情理由
区議会令和元年第2回定例会にて、公共の場所での飲酒、音響機器の使用等を規制し、酒類販売の自粛を求める内容が盛り込まれた、渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例案が審議されようとしています。
この条例案は、ハロウィーンや年末カウントダウン時のトラブル防止が目的の一つであろうと思いますが、窃盗や暴行等の迷惑行為は既存の法令で取り締まることができ、飲酒や音響機器使用等を規制する新たな条例を制定する必要はありません。そもそも公共の場所での飲酒は憲法上の権利である幸福追求権や自己決定権で保障された行為であり、音響機器の使用は同じく憲法上の権利である表現の自由で保障された行為です。加えて、条例で酒類販売自粛を求めるのは、公権力が事業者へ圧力をかけるものであり、経済活動の自由に反します。
このように、公共の場所での飲酒、音響機器使用等を規制し、酒類販売自粛を求める条例は、立法事実に欠け、憲法上も問題があります。以上の理由から、下記陳情致します。
陳情事項
1. 飲酒、音響機器使用その他一切の行為を規制し、また酒類販売自粛を求める内容の条例を制定しないでください。
2. 今後、区内における安全で安心な環境を確保するための区の施策についてすべての情報を公開してください。
3. 今後、区内における安全で安心な環境を確保するための区の施策の策定にあたっては、一部の行政機関や団体のみならず広く区民、来街者の意見を取り入れてください。
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渋谷区の路上の自由を守る会
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私は6月28日の飲酒行列(デモ)を取材し、動画(06:15)にまとめました。
「渋谷区の路上の自由を守る会」メンバー、和田拓磨さんのインタビュー。
デモを取材して、こんな言い方も変かもしれませんが、(楽しかった!)というのが一番の感想でした。渋谷区が謳う、鍵カッコつきの「ダイバーシティ」なんて言葉が陳腐に思えるほど、そこは本来の多様性に溢れた「場」となっていました。
普段、「デモ」というのもは、そのテーマごとに顔ぶれは固定してしまいがちです。しかし、「酒を飲む」「楽しむ」というテーマ(!?)は、思想の左右を問わず、国籍、性別やジェンダーも問わず、あらゆる垣根を超えるものであるため、このデモには、様々なバックグラウンドの人たちが集まっていました(もちろん、宗教その他の理由から飲酒を禁じられている国・地域もあるし、「飲まない・飲酒を強要されない」自由も大切です)。
そんな多様な雰囲気も相まって、とても楽しい!と思えるデモ取材でした(^^)
ところで、このブログを読んでいる方々のなかでは、それでもなお、ハロウィンや年末年始の路上飲酒や音楽を規制するべきだ、日常生活にはほとんど支障が出ないから良いではないか?と思う人も少なくないかと思います。
「渋谷区の路上の自由を守る会」が配布するチラシには、この、一見限定的に見える条例に、どのような問題が潜んでいるのか、そして、こういった条例が将来に及ぼす影響についても言及されています。
「問題だらけの路上飲酒禁止条例」チラシ(画像は、スマホ画面の拡大機能等で拡大してご覧になれます)
条例に反対する署名サイトはこちら。
ハロウィン時の暴動や犯罪行為は、誰にとっても迷惑ですから、こういった条例の制定・導入は理解を得やすいです。しかし、市民の自由を制限する法律は、やがてその対象を広げ、適用期間も増やしていくでしょう。自由に歌を歌ったり、おしゃべりをしたり、何か不満があれば抗議をしたり…そんな「当たり前」の行為ができなくなり、私たちは単に「消費者」としてしか、まちなかでの存在を許されなくなるでしょう。(公共空間は、すでにそう変わりつつありますが… > <!)
既にある法律で犯罪行為は取り締まれるのだから、市民の自由を制限するような法律は作らせない―。こういった法制定の動きに、敏感に、警戒心を持っていたいと思います。