11月19日、杉並区善福寺の「あなたの公-差-転」(以下、kosaten)にて、映像ワークショップを担当しました。ここは、イギリス出身のキュレーター・太田エマさんたちが主宰する、アート・スペースです。
kosatenとは…(ホームページより引用)
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公共の公 ・・ 差異の差 ・・ 転回の転
ここはただ見るだけのアートスペースではなく、誰かに提供されたスペースでもなく、あなたが自分のものとして活用できる、様々な人と一緒に作れるスペースです。
公共空間として誰でもいつでも入れる場所、自分と違うものと出会う場所、何かをこれから変えていく刺激になる場所。パブリック=公共の概念そのものを違う方向へ転回していく場所です。
ここでは「シェア」することが重視され、来場者との交換スペースとして機能します。入ったら何かが得られるかもしれませんが、また何かをあげることも重要となってきます。 このように、ほとんどお金を介さない方法で人と人とのコミュニケーションが生まれていきます。ご来場の際、何をgiveするか、何をtakeするか是非検討していただきたいです。
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kosatenは、まだオープンして数年ですが、訪れるたびにどんどん特色(?)が色濃く打ち出されていっている気がします(^^) 以下はワークショップ開始前に撮ったkosatenの写真。
kosatenは和田ビルの4階にあります。
階段を上っていきます。
「Turn your world upside down! 」(あなたの世界をひっくり返そう!)
「REFUGEES WELCOME」 (難民歓迎)
「出入平安」(^^)
kosaten、中の様子
入り口には様々なフライヤーが。移民、難民、労働、人権、地域コミュニティー、アートなどに関する情報が多いです。
「小冊子交換BOX」。通常の流通経路では手に入りにくいであろう、面白そうなZineが並んでいます(^^)
「BOOK HOTEL」:誰かに読んでほしい&一緒に読みたい本を、ここに置くことが出来ます。「寄贈」も出来ますが、手放さなくてもここに「置く」ことで、他の人にも読んでもらえ、他の人が「置いた」本も読むことが出来ます。
私は(本棚ほど、その人の思想が現れている場所はない)と常々思っているのですが、kosatenの本棚の品ぞろえは、まさに「kosaten」そのもの!! 本だけでなく、DVDなどもあります。
楽器やレコードプレーヤーも。
最近レコードにはまっているというエマさん。今後はレコードのコレクションも増えていくのかも?(^^)
ところで、今回の映像ワークショップ開催についてエマさんからお話を頂いたのは、1か月ほど前のことでした。国連は2000年に、12月18日を「国際移住者デー」と定め、移住先で搾取・差別されることの多い移民の実情を知ってもらうとともに、すべての移民の権利・尊厳が守られるよう、啓発しています。日本でも、この「国際移住者デー」にちなんで、毎年12月18日前後に「移住連」という団体がイベントを企画しています。
今年は、12月16日(土)にYMCAアジア青少年センターにて、「ここにいる koko ni iru.」動画・写真フェスティバルが開催されます。移住者や外国にルーツをもつ人びとがこの社会に暮らしていることをあらためて共有することを目的として、「ここにいる koko ni iru.」をテーマとした作品(動画、写真、イラスト)の公募をしています。
今回の映像ワークショップは、このイベントに向けて映像作品を応募することも視野に入れ、特に移住者や外国にルーツをもつ人びとを対象として、動画の作り方を学べるようにしたいとのことでした。
映像ワークショップは、私の場合、「1回完結」ならば「技術的なこと」をメインにすることが多いです。ワークショップを受講する以上、最低限の撮影と編集について覚えて帰っていただくのが、私の役目だと思うからです。(「身につける」、「使いこなす」…とまではいかなくても、最低限の「作業の流れ」を理解する、そして映像制作に対する心理的なハードルを下げ、「自分にもできる」と思えるようになることを目指しています)。
一方、6~8回程度連続で行うワークショップでは、技術面に関することは半分以下となり、講座のメインは「撮影するとはどういうことなのか?」、「中立、公平であることは可能か?」、「どこまで撮影できるのか?」、「カメラの暴力性」、「被写体との関係性」、「編集の絶大な力」…といったような「ドキュメンタリーの考え方」に中心を置いています。そういったテーマで、ディスカッションをしたり、考えるヒントとなる映像を見ることに、より多くの時間を割きます。
映像ワークショップというと、とかく「技術的なこと」に終始しがちですが、私としては技術的なことよりも、こういった「考え方」の方がよっぽど大事だと感じています。
とはいえ、今回は1回完結のワークショップで、「映像祭へ応募する」という具体的な目標もあるので、とにかく技術面についてしっかりやろうと考えました。しかし、エマさんからは「考え方についても触れてほしい」というリクエストが…(^^;)!!!
集中力の持続という点から、ワークショップの最適な時間は3時間が限度なのですが、上記のリクエストも踏まえ、4時間とし、質問タイムも含め最長5時間までとすることになりました。撮影、編集の技術的な説明のほか、今回は移住者・海外にルーツを持つ人を対象としたワークショップのため、「マイノリティとメディア」というテーマで、映像の持つ可能性と影響力について、映像を見ながら考えることが出来るような構成にしました。
ワークショップの様子。参加者は、中国、韓国、パキスタン、フランス、コンゴ、日本という多彩な顔触れ(^^)。ワークショップは日本語で説明しましたが、コンゴ出身の方にはフランス人の参加者がフランス語で通訳しながら進めました。講座のはじめに私の自己紹介のほか、参加された方々にも、それぞれ、自己紹介と、関心のあるテーマや作ってみたい映像について話していただきました。
三脚の使い方についてデモンストレーション。
ワークショップの時間が短い時に、「ディスカッション」や「屋外での撮影」をするのは、予想外に時間を取られてしまうという「危険行為」なのですが(^^;)、一通り撮影について説明をした後、二人一組になってもらい、屋外を含め、自分たちの好きな場所で撮影するという課題に挑戦。
「撮る」側だけでなく、「撮られる」側も、「自然体である」ということは、何気に難しいですよね! 大抵は、動画なのに、まるで写真を撮られているかのように「静止」してしまう人が多いです。「撮られる」ことを体験してもらうというのも目的です(^^)
どうやったら、日常のそのままの感じの映像が撮れるか、被写体の人が緊張しないか、その人の普段通りの「らしさ」を引き出せるか…etc、撮影を繰り返しながら、自分で工夫していくことが大切です(^^)
休憩の後、後半は「編集」について説明し、実際に撮影した映像で、グループごとに編集作業をしてもらいました。
こちらのグループは、全員がマックユーザーだそうで、編集作業よりもウィンドウズの操作に苦戦していました(^^)
なんとか時間内に編集作業を終え、完成作品を上映しました! 作品のテーマは「今日の朝ごはん」(^^)
詰め込み過ぎなワークショップでしたが、参加してくださった方々がとても意欲的&協力的で、エマさんのサポートもあり、無事、4時間半ほどで予定していたすべての内容を終えることが出来ました!
今回のワークショップをきっかけに、動画を自分たちの情報発信のツールとして活用してもらえたら…と願っています(^^)
「ここにいる koko ni iru.」動画・写真フェスティバルの、作品募集について以下にご紹介します。興味のある方は、応募してみてはいかがでしょうか? 締め切りは12月1日です!
テーマ:「移住者あるいは外国にルーツを持つ私にとって、 “ここにいる”とは?」
「私の一日」「私のごはん」「私の家族」「私の友だち」「私の仕事」「私の幸せ」「私の夢」など、移住者あるいは外国にルーツをもつあなたやあなたにつながる誰かが、“ ここにいる” ことを表現した動画(3分間以内)や写真、イラストを募集。国籍等は問いません。
応募について、詳細はこちらをご覧ください。優秀作品にはギフト券などが贈られるそうですよ(^^)/
そして個性豊かな「kosaten」にも、ぜひぜひ遊びに行ってみてくださいね♬
以上、kosaten映像ワークショップの報告でした。