前回は順番を前後して、竹炭を窯から取り出す作業について紹介した。今回は、いよいよ火入れ(炭焼き)作業である。
これまで書いてきたように、炭焼きの具合は、煙突から出る「煙」で判断するしかないため、火入れは晴れの日に、朝早くから行う必要がある。この日は、普段より30分集合時間を早め、朝8時半にお師匠さんの家に向かった。
自転車のカゴには、帽子、軍手、タオルなど、いつもの持ち物に加えて、アルミホイルと安納芋をセットした(^^) 安納芋は、私のホームページをデザインしてくれている、イさんから頂いたもの(^^)
炭焼き場に到着し、火入れに必要な道具をそろえる。うちわ、火バサミ、新聞紙は必需品だ。
乾燥させたタケノコの皮は、最初に火をつけるのに使う。たき火の時、最初に新聞紙など燃えやすいものに火をつけるのと同じだ。ほんと、竹のあらゆる部分を、余すことなく使い尽くせるのだなぁ・・・と感心してしまう。
最初の約1時間は、付きっきりで火力を上げていくため、大量の竹を使う。竹炭用としては使えない短い切れ端を、傍らにたくさん用意しておく。
お師匠さんがまず見本として、片方の窯に火をつけた。ドラム缶の手前に取り付けた、一斗缶の部分で火を燃やす。新聞紙やタケノコの皮など、燃えやすいものから火をつけ、火が安定してきたらどんどん竹をくべる。
炎が弱くなったら、うちわであおいで風を送り、なるべく強い炎に保つ。大きな炭焼窯では、扇風機を回し続けて火力を大きく保つそうだ。それぐらい、最初の1時間は強い火力にし続けなければならない。
太い竹はナタで割り、燃えやすいサイズにする。
これまで、全ての工程は、一つの窯でお師匠さんが説明しながら実演し、続けて、私がもう一つの窯でやってみるという方式で教わってきた。ゆえに、お師匠さんが私にマッチを渡し、「じゃ、やってみて」と言った。
・・・えええ、マッチ渡されちゃったよ・・・(;゜∀゜)
私は、「マッチで火を点けたことがないのですが、どうやって・・・?」と質問した。
・・・お師匠さんは、(そこからかよ!)という表情で固まっていた(^^;)
私は、自分の経験と知識には、かなりの「むら」があると認識している。「マッチを点ける」というのは、どの程度「当たり前の経験」なんだろうか? 私はたばこを吸わないし、キャンプファイヤーでは大抵得意な人が率先して火を点けるし、公園での花火や自宅でのたき火は禁止している自治体がほとんどだ。誰かがやってくれる、危ないから禁止されている・・・自ら積極的に求めない限り、マッチで火を点けることなく「大人」になってしまう人がいてもおかしくない。
小さなたき火さえ、自分でやったことがなかったので、いざ、昨年の秋に、庭で小さなたき火をしてみたら、チャッカマンで火を点けた直後、突風で大きな炎になり、本当に怖い思いをした。それでますますたき火が怖くなり、火をコントロールする経験や知恵を持てなくなってしまうのである。しかし、そうやって火から遠ざかってしまうのは、それもまた「危険」なことではないだろうか?
今回、お師匠さんに手渡されたマッチを、とりあえずこすってみたが、火は点かなかった。「しけってます」とお師匠さんに手渡すと、彼はさっと火を点けて新聞紙に炎を近づけた。
・・・こうしてまた私は、「マッチで火がつけられない女」でい続けるわけだ(^^;)
お師匠さんに火を点けてもらった後は、自分で竹をくべ、うちわであおぎ、火力を上げていった。自分の家でやった「野焼き」と違い、一斗缶で囲われた中でのたき火は、周囲に火の粉が飛び散ることがなく、安心して行うことができた。
ドラム缶窯の前に座り、ひたすら火を焚き続けるのは、もちろんものすごく熱いし、とにかく煙が目に染みる。竹の場合、臭気はそんなに強くないものの、目への刺激がかなり強い。
さて、炎が安定してきたところで、私は持ってきた安納芋を取り出した。
・・・そう、焼き芋をするために( 〃▽〃)!!!
安納芋をアルミホイルにくるみ、窯の側面の土中に埋める。炭焼き中、内部は600度近くの高温になるというから、焼き芋ができるだろうと考えたのだ。私にとっては、竹炭作りと同等、もしくはそれ以上に楽しみにしていた、「焼き芋づくり」なのだった。
美味しい焼き芋になってくれよ~~~(祈)!
先に、窯内部の状態は、煙突から出る煙で判断すると書いたが、強い火力を保ち続けて40分ほどたつと、密度の濃い、真っ白な煙が煙突から上がり始める。
(この煙の状態が3~4時間続くので、周りにほとんど家がないという環境でないと、竹炭作りは難しい。私の家は、微妙・ギリギリなところである)
上の写真くらいの濃度&量の煙が継続して上がり始めたら、「中どめ」をする。一斗缶の蓋をして、隙間を泥まんじゅうでふさぎ、酸素を送るのを止めるのだ。
なぜ、「中どめ」と呼ぶかというと、これは「仮どめ」だからである。煙が安定してもくもくと3~4時間上がり続ければ良いのだが、時には、途中で煙が出なくなってしまう場合がある。その時には、泥まんじゅうを取り除き、一斗缶の蓋を開けて、再び火を点け、火力を強く保ち、沢山濃密な煙が出るまで竹をくべ続ける・・・という作業に戻る必要がある。「本どめ」をしてしまうと、一斗缶の蓋を開けるのが大変になってしまうので、この時点では簡易な「中どめ」にしておくのだ。
泥まんじゅうを耐火レンガで押さえて、はがれ落ちないようにする。
両方の窯の煙が安定したところで、お昼休憩となった。
この日のお昼ご飯。好きなものを好きなだけの、食べ放題方式。並んだお料理はどれもおいしそうで、ついつい取りすぎてしまう(^^;)
おでん♬
自家製野菜♬♬
お師匠さんよりも大食いの私(^^;)
お昼ご飯のあとは、午後の作業。炭焼き窯の煙突から、安定して煙が上がり続けているかを時々確認しながら、他の作業を行う。
これまで、「竹を詰める」、「火入れ」、「竹炭の取り出し」という炭焼きの一連の作業を経験してきたが、午後は、それ以前の段階=「竹材の加工処理」を教えてもらうことになった。加工処理の第一歩は、竹の伐採と笹の切り落としだが、こちらに関しては、私は自分の裏庭でさんざん経験済みである。
私は、伐採した竹は、表庭に放置したままの状態だが、お師匠さんの場合は、竹炭作りのために、伐採した竹をさらに加工するのである。
整然と並べられた竹材。
笹の部分は、お師匠さんのところでもこのまま放置し、活用はしていないとのこと。(私は、自分の庭では、雑草が生えてこないように笹を敷き詰めてみた。しかし、そんなの構わず雑草が大量に生えてくるのか、今後の様子を観察することにしている。)
竹の加工処理の流れとしては、まず、伐採して笹を切り落とした竿を、ドラム缶窯に隙間なく詰めるために、82センチの長さに切りそろえる。その次に、道具を使って、4分の1に割る。さらに、トンカチを使って、竹内部の凸部を取り払い、隙間なく重ねられるようにする・・・これが一連の流れである。
竹の伐採や竹炭作り自体は、比較的「大したことない」作業だが、こういった下処理加工は、気の遠くなる、一番大変な作業なのである。
竹を82センチの長さに切りそろえるための道具。
4分の1に割り、きれいに重ねて保管された竹材。この状態まで加工して初めて、炭焼き窯に詰めることができる。
まずは、10メートルほどの長い竹を、82センチの長さに切りそろえていく作業から。
この、お酒ケースに座って作業をすると楽♪
下の写真は、竹挽き専用のノコギリ。お師匠さんは「仕事は"道具"がするもの」と、口癖のように言う。良い道具、正しい道具を使えば、安全で仕事がはかどるということだ。このノコギリは竹専用で、歯がとても細かい。私のノコギリよりも、はるかに簡単に竹を切ることができる。私もこれ、欲しい!!! 竹とたたかう人のマストアイテムと言えよう。
竹を82センチの長さに切りそろえたら、次は4分の1に割る作業だ。割るための道具はこちら。
見たこともない道具である。今時、こんなものは手に入るのか?と聞いたら、ホームセンターで「取り寄せ」してくれるそうだ。サイズは大&小あり、竹の太さに合わせて使い分ける。
竹割は、石やコンクリートなどの、固い地面で作業を行う必要がある。まず、竹を垂直に構え、てっぺんにこの道具を置き、押さえたまま竹を1メートルほど振り上げ、そのまま地面に思いっきりたたき落とす・・・そうすることで、この道具が竹に割り込み、4分の1に割けるのだ。
この重い道具を竹の上において、さらに重い竹ごと振り上げ、振り下ろす・・・というのは、かなりのコツと相当の力が必要だ。しかし、石の上に力強く振り下ろさないと、この道具は竹に割り込んでいかない。お師匠さんは1~2回で割れるが、私は何度やっても、一向に割り込んでいかなかった。
腕や腰に相当負担がかかりながら、振り上げ&振り下ろしを繰り返すこと数回。やっと、この道具が十文字に竹に食い込んだ。
更に振り上げ&振り下ろしを繰り返す。
何度も振り下ろしていると、突然一気に下まで割ける。注意しないと、振り下ろした勢いで、割けた竹が顔や肋骨にぶつかる。腰の負担といい、地面に叩きつける振動といい、体への負担がハンパない、かなりヤバい作業である。この作業だけで、竹炭作りを断念するに値する。
お師匠さんは、当初はナタを使って竹を4分の1に割っていたそうだが、それはこの道具以上にとても大変だったそうだ。この道具にしてから、比べ物にならないぐらい、作業が楽になったという。・・・どうにかならないのか、この工程は!
最初はビクともしなかった竹割りだが、それでもだんだんコツをつかんでくると、短時間で割れるようになった。しかし、相変わらず体への負担は大きい。
竹を4分の1に割った後は、内部の凸部をトンカチで取り除いていく。
ここまでの工程が、竹炭を作るための、竹材の加工処理である。
竹の加工処理をしながら、時々炭焼き窯へ煙の様子を確認しに行った。3時間ほど経つと、だんだん煙が薄くなってくる。
これぐらい煙が薄くなったら、今度は「本どめ」だ。最後まで残しておいた、一斗缶の蓋の「穴」部分も泥まんじゅうでふさぎ、窯の入口&全体に土をかぶせ、窯全体を保温する。
この状態で丸1日置く。そのかん、雨が煙突から入らないように、煙突に空き缶&重石をかぶせる。
こうして、丸1日以上保温すれば、無事竹炭が完成するのである! これで、炭焼き窯をドラム缶で自作する工程以外の、竹炭作りの全工程を体験したことになる。つくづく、大変な労力のたまもので竹炭ができるのだと実感した。
お土産に、竹炭を沢山いただいた!
ところで、炭焼きと同時に行っていた焼き芋はどうなったか・・・。炭焼き窯の側面を掘り返し、アルミホイルにくるまれた安納芋を取り出した。アルミホイルは焦げてはおらず、でも熱々で、期待が膨らむ!!
一日の仕事の後、お師匠さんたちと試食をすることになった。
包丁で切ってみると、断面は黄金色でいい感じ~♬
早速一口頂いてみると・・・
・・・?
うーーーむ・・・
芋の表面がじめっとしていて、中は乾燥気味という、ちょっといまいちな食感・・・。お師匠さん曰く、「長時間やりすぎた」せいだというではないか。
・・・竹炭作りよりも楽しみにしていたのに、どうしてくれるんだっ!!!
やり場のない怒りを抱えつつ、2~3月にかけての「竹とのたたかい~竹炭作り」を終えたのだった。
(了)